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活性を保ったイメージングでプラスミド分配の真実に迫る
~プラスミド分配を司るらせん状モータータンパク質、SopAの分子機能の研究~
DeltaVisionお客さまの声

仁木 宏典先生様

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 原核生物遺伝研究室
教授、博士(医学)(兼)放射線・アイソトープセンター長

仁木 宏典先生

仁木教授の研究室では、原核生物の大腸菌や真核生物の酵母をモデル生物として、染色体やプラスミドDNA が動く仕組み、細胞の形が決まる仕組み等の研究をされています。遺伝学的な方法に加えて、蛍光タンパク質によるDNA やタンパク質のイメージングを用いて、細胞増殖過程でどのような現象が起こっているのか、多数発表されています。そこで仁木教授に、研究内容や、DeltaVisionを使ってどのようなデータを取られたのかお聞きしました。


研究テーマ:プラスミド分配を司るらせん状モータータンパク質、SopAの分子機能

大腸菌の性決定因子Fプラスミドは、細胞内に1から2コピーしかないにもかかわらず、娘細胞へと安定に分配されます。この過程でATPaseのSopAタンパク質が分配の駆動力になっているのではと考えられていました。いかにしてSopAタンパク質はプラスミドに駆動力を与えているのだろうか?というのが私たちの問いでした。
私たちは、生きた細胞E. coli(AB1157)の中でプラスミドDNA(mini-F plasmid)とSopAタンパク質を蛍光タンパク質YFPまたはGFPで標識し、両者の動きを解析しました。SopA-YFPタンパク質は細胞極近くに強い輝点を形成し、これが重合の中心となり、そこから細胞全体に繊維(らせん)状に構造体を延ばしていました。また、SopAタンパク質の重合中心は、細胞内の端から端へ周期的に移動し、その後を追ってプラスミドDNAも周期的に移動していました。SopAタンパク質は、直接プラスミドを押し引きしているというより、プラスミドの移動方向を決めていると考えられました。さらにSopAタンパク質繊維構造には方向性があり、Fプラスミドの分配をガイドするレールとして機能すると考えられました。

DeltaVisionではじめて見えた、らせん構造

2005年頃、大腸菌にも細胞生物学的手法が導入され、バクテリアでの細胞骨格の存在を示唆する新しい知見が発表されはじめていました。当研究室では、プラスミド分配タンパク質SopAのより詳細な細胞内局在を解明するために、DeltaVisionでSopA-YFP(またはGFP)融合タンパク質の細胞観察を行いました。 特に、私たちはSopAタンパク質のより本来に近い姿を観察することを目標とました。これを実現するため、mini-F内在遺伝子上流に直接gfp(yfp)遺伝子配列を組み込むなどの工夫により、生物活性を保った状態でSopA-GFPまたはYFP融合タンパク質を発現させることに成功しました。SopA-GFP(YFP)融合タンパク質の局在を観察するため、共焦点顕微鏡法やTIRF法も検討しましたが、SopA-GFP融合タンパク質の局在はシグナルが弱すぎてうまくとらえられませんでした。一方、DeltaV™Isionは感度が高く、はじめてらせん構造のピッチ幅計測や、濃度分布などの定量的な解析が行え、SopAタンパク質の分子機能に関する新しい発見につながりました(図1)。これはDeltaVisionが光の利用効率の高いデコンボリューション法に最適化したシステムであるからと考えられます(図2、三次元再構築像)。さらに、弱い光で細胞毒性の少ない観察ができるDeltaVisionは、より本来のプラスミド分配の姿を知りたいという私たちの目標において貴重でした。また、細菌や酵母の遺伝子産物の局在を網羅的にスクリーニングし、イメージライブラリを作成するうえでも、画像取得が容易に行えるDeltaVisionは有用でした。

図1. 大腸菌内のプラスミド分配(SopA-GFP融合タンパク質)の繊維状の局在
図1. 大腸菌内のプラスミド分配(SopA-GFP融合タンパク質)の繊維状の局在


SopA-GFP融合タンパク質の3次元復元像

※お客さまの使用経験に基づく記載です。

仁木先生ご所属の国立遺伝学研究所  原核生物遺伝研究室からのメッセージ!
「私たちは大腸菌、分裂酵母をモデル生物として染色体動態を細胞生物学的、遺伝学的に解析しています。大腸菌のセントロメア配列を同定したので現在は染色体構造の構築制御機構の解明を目指しています。染色体がより大きく見える分裂酵母S.japonicusの遺伝学システムを新しく立ち上げ、新規の染色体因子の同定を目指しています。種々の最新の顕微鏡を用いて染色体を覗きたい諸君!いざ、仁木研究室へ!」
国立遺伝学研究所 原核生物遺伝研究室 ホームページ

 

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