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リンパ球の躍動からアレルギーを推理する

浜松医科大学 皮膚科 准教授
橋爪 秀夫

局所のリンパ球による炎症反応の機構を明らかにするためには、そのリンパ球の機能解析と同時に、局所へいかに浸潤するのかという点が重要である。CD4陽性リンパ球はその産生サイトカインによって、細胞性免疫を司るTh1細胞と抗体による液性免疫を司るTh2細胞に分類され、両者はTh1/Th2パラダイムシフトによって均衡を保っている。アトピー性皮膚炎、薬疹や喘息などのアレルギー疾患では、interleukin(IL)-4やIL-5を産生し、IgEの過剰産生、好酸球の病変への浸潤をもたらすTh2細胞が優位になることが知られている。近年、リンパ球をはじめとする種々の免疫担当細胞に、固有のケモカイン受容体が発現し、局所におけるケモカイン産生に応じた細胞のリクルートメントの詳細が明らかにされ、さらに、ケモカイン受容体は他の因子によって調節されていることも判明してきた。細胞の局所への動員メカニズムを明らかにする事は、アレルギー炎症機構を明らかにするだけではなく、新たな治療の開発へと可能性を広がらせる。

我々は、アレルギー炎症や主要免疫におけるリンパ球のケモタキシスの詳細を検討するために、EZ-TAXIScanを使用している。これまで、リンパ球などの遊走を測定するための方法として、ボイデンチャンバーを用いた方法が普及している。本方法は定量的であるために、種々のケモカインや異なる細胞間での比較が容易であり、手技も簡便ではあるが、検体として用いるためにはかなりの細胞数が必要であった。このため、ヒトの局所に浸潤している少数の細胞の遊走を検討するのには困難であった。本装置は、比較的少数の細胞で検討ができる点、また、ケモカインなどに対して水平方向へ動く、より生理的な作用を直接目視できる点でこれまでの方法と比較して優れる。この方法を用いて、我々は1)皮膚T細胞リンパ腫の皮膚内浸潤細胞のケモカイン反応性の検討、2)アレルギー炎症抑制的に働くロキソスロマイシンのリンパ球の遊走に対する影響の検討、3)ストレス反応物質であるアドレナリンのアレルギー炎症におけるリンパ球の遊走に対する影響の検討を行った。その結果、いくつかの新知見を得られたので概説し、本解析方法の有用性について考察する。


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