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バイオダイレクトメール vol.62 細胞夜話
<第24回:ウイルスがクセモノ? - アフリカミドリザル腎細胞>

残念でした。正解はVeroです。

残念でした。正解はVeroです。

おめでとうございます。正解です。

Vero細胞

Veroとベロ(舌)は関係ありません

千葉大学の安村博士は、ポリオワクチン研究の経験からサルの細胞がウイルス研究に非常に役立つと考え、サルの腎細胞株の樹立に取組むことにしました。最初はアカゲザル、カニクイザル、後にニホンザルでも試しますが、サルの細胞に感染しているウイルスが悪影響を及ぼすらしく、培養を始めてから1ヶ月から1ヵ月半ほどで細胞がだめになってしまうのです。結局その問題は解決できず、どのサルの細胞でも安定した細胞株を樹立することはできませんでした。

1960年にSimian vacuolating virus 40(SV40)が発見され、SV40に腫瘍原性があることも報告されました。安村博士は腫瘍ウイルスとしてSV40の研究を始めることにしました。そこで、SV40を感染させやすいアフリカミドリザルの腎細胞を使う実験系を組むことにし、まず最初に実験の材料となる細胞株の樹立に取組みました。

培地の調製に使う試薬から細胞の培養に使うガラス瓶まで、実に入念に条件を調整しながら進めた結果、1962年に培養を始めた細胞が無事に実験に適した細胞株となりました。

この細胞がVero細胞と命名されるのですが、Veroはエスペラント語の緑を意味する「Verda」と腎臓を意味する「Reno」の合成語だそうですが、同じくエスペラント語で「Vero」は真理を意味する言葉でもあります。
もしも、この時アカゲザルを使っていたら、エスペラント語で赤を意味する「Ruga」との合成語でRugo細胞やRuno細胞になっていたかもしれません。

こうして樹立されたVero細胞株は、たまたまインターフェロンを作らないという特性をもっていたため、さまざまなウイルスを容易に感染させることができました。この特徴から、ウイルスの研究に幅広く使われるようになりました。
また、近年の病原性大腸菌O-157で有名になったベロ毒素は、Vero細胞を殺すことからつけられた名前です。

CV-1細胞

CV-1細胞の初出は1964年でした。当時、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の感染によって、霊長類で腫瘍が形成されることが知られていました。そこでウィスター研究所のジェンセンたちは、ヒトの線維芽細胞と正常なサルの細胞にRSVを感染させ、感染の効果を確かめる研究を行うことにしました。

CV-1細胞はその研究のためにアフリカミドリザルの腎臓の細胞から樹立された細胞株です。現在ではCV-1をそのまま実験に使うことはあまり多くないかもしれませんが、後にCV-1細胞から派生したCOS-7細胞は今日でもよく利用されています。

COS細胞

COS細胞の初出は、だいぶ時代を下って1980年代初頭でした。

ウイルスを感染させることで細胞を形質転換できることや、そういった形質転換した細胞を宿主とすることで、一部の機能を欠失させた変異型ウイルスを増殖させることができることなどが知られていました。
しかし、そのような研究は主にアデノウイルスやヘルペスウイルスを用いて行われており、同様の試みは例えばパポーバウイルスではまったく成功しませんでした。また、ポリオーマウイルスではウイルスの増殖に使える細胞はできたものの、増殖に使えるようになった理由は、形質転換によって宿主細胞でつくられるようになったウイルス遺伝子産物とはあまり関係がないという結果でした。

そこで、コールドスプリングハーバーのグルツマンは、CV-1にサルを宿主とするポリオーマウイルスSV40の変異株を感染させて形質転換することで、変異型ウイルスの増殖に使える宿主細胞を作出しようと試みました。

その研究の結果として得られたのがCOS株で、グルツマンの論文によるとCOSはCV-1 origin, SV40の略だそうです。グルツマンの研究で得られたCOS株にはCOS-1、COS-3、COS-7の3種類があり、中でもCOS-7は研究材料としてよく使われました。

参考文献

  1. 安村 美博および川喜田 愛郎, 組織培養によるSV40の研究, 日本臨床, 21巻6号, 1201-1215 (1963)
  2. 細胞培養研究の発展史(医薬基盤研究所・生物資源研究部・生物資源情報(JCRB)細胞バンク)
  3. ATCC
  4. Jensen F. C., Girardi A. J., Gilden R. V. and Koprowski H., Infection of human and simian tissue cultures with Rous sarcoma virus., Proc. Nat. Acad. Sci., U.S.A., vol. 52, 53-59 (1964)
  5. Yakov Gluzman, SV40-transformed simian cells support the replication of early SV40 mutants., Cell, vol. 23, 175-182 (1981)

細胞夜話作者の余談

  • かなり古い文献ですが、日本臨床に掲載されている安村教授の論文は、たいへん面白いです。研究に使う材料作りから始めなければならなかった草創期ならではの熱気と試行錯誤を、研究者が自分の言葉で平易に語っています。日本語でもありますし、この分野に進まれる学生さんにはぜひ一読をおすすめしたい文献です。
  • COS細胞を樹立したグルツマン博士は、離婚話のもつれから殺害されてしまったそうです。研究に大きく貢献した研究者がこのような形で世を去ってしまったことは、非常に残念です。

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