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クロスフローろ過において、ReadyCircuit™ 2-Dバッグを使用し、タンパク質の溶液層の形成を克服

クロスフローろ過(CFF)によるタンパク質の濃縮中および濃縮後にタンクをはじめとする容器を使用せず、シングルユースの垂直バッグを使用する場合、混合器による撹拌は適しません。シングルユースがもたらすコストの利点を活かすためには、タンパク質溶液が形成する好ましくない濃度勾配を解決しなければなりません。チューリッヒ応用科学大学(Zurich University of Applied Sciences、ZHAW)のSebastian RotheとDieter Eiblは、クロスフローろ過におけるタンパク質層形成の問題を回避するために新製品のReadyCircuit™ピローバッグアセンブリが有効であること報告しています。

シングルユース・プロセッシング戦略に基づく最新のテクノロジーは、ステンレススチール製のCIP/SIPシステムの繰り返し使用と比較して、デザイン、テスト、検証および人員の訓練にかかるコストだけでなく、設備投資、精製水の容量、有用性の点で、多くのコスト削減をもたらしました。しかし、このようなコストの利点は明確でも、シングルユースと繰り返し使用の2つの戦略の違いからいくつかの疑問も生じてきます。1つは、「ミキサーやインペラーを簡単に追加する方法がない場合、これらのシングルユースバッグ(特に垂直バッグ)でどうすれば十分に混合できるのか?」ということです。

上記の疑問を確認するため、垂直にマウントした20 L ReadyCircuit™ 2-Dピローバッグを使用して、あらかじめ滅菌したReadyToProcess™無菌ホローファイバーフィルターを用いるクロスフローろ過操作中の混合の程度を調べました。10,000 NMWCの限外ろ過膜の濃縮の場合と同じ表面積で行いました。バックの方向が垂直であることと、ポートの位置から考えて、タンパク質溶液の濃度勾配を引き起こす可能性がある20 Lの吊り下げ型バッグは十分な混合が最も難しいものと考えました。

実験計画

流速、バッグ容量、流路、粘度などのパラメータはタンパク質の濃度勾配のリスクを高める可能性があります。ReadyCircuit™ 2-Dバッグ内で糖溶液を濃度勾配のモデル化し、さまざまな操作条件の影響を検討しました。各種パラメータを組み合わせて、濃度勾配を比較しました(図2)。バッグ内で形成した濃度勾配を均質化するパラメータはクロスフローろ過によるタンパク質濃縮中の濃度勾配にも有効と考え、この実験のアプローチを選択しました。

図2に示した再循環流路を、表1の実験デザインにしたがって検討しました。この混合試験では、最初のパートではホローファイバーカートリッジへ接続しませんでしたが、後のクロスフローろ過実験の第2ラウンドで使用しました。

写真:システム外観
図1. ReadyKartに取り付けたシングルユース・バイオプロセス流体システム
(A)および(B)垂直にマウントしたReadyCircuit™ 2-Dピローバッグ(4ポート式のCFFおよび3ポート式のNFF)は、1、5、10および20 Lのサイズに対応しています
(C)ReadyKartトレーに水平にマウントした3ポート式のReadyCircuit™ 2-Dピローバッグ
(D)ReadyKart容器中にマウントした大型ReadyCircuit™ 3-Dバッグ(100 Lおよび200 Lのバッグを提供しています)

図:各試験の流路
図2. 各試験の流路図
左:均質/混合(HM)試験。バッグの底部から出て、底部へ戻る再循環経路(ReadyCircuit™ 20 L 2-Dピローバッグ)
中央:バッグの底部から出て上部へ戻る再循環経路の底部から上部への再循環経路の場合の均質/混合試験
右:アシッドイエローから粘性のブルーデキストランを分離するために使用した限外ろ過の均質/混合試験(図に示したように、再循環経路を底部出てから底部戻る場合と、底部出て上部へ戻る場合を速やかに切り替えるようにしました)
図2凡例1ReadyMate™コネクター
図2凡例2STSインジェクション用のシングルReadyMate™コネクター
図2凡例3クランプ
図2凡例4再循環経路を底部から底部と底部から上部の間で切り替えるための2個のクランプ

表:計画とデータ
表1. 混合試験の計画とデータ

ReadyCircuit™ 2-Dバッグ内での濃度勾配の調製

ReadyCircuit™ 2-Dバッグ(20 L)に浸透水を最終液量の95%まで充填しました。水を循環させて流路を洗浄した後、バッグ内にヨウ素で色をつけた糖溶液をバッグ底部からペリスタルティックポンプを用いてバッグ底部左側にある小さなポートから慎重に入れました。形成された有色糖溶液の層の容積は、バッグ内の最終液量全体の5%分に相当しました。

有色の溶液はバッグ底部にとどまり、目に見える安定な層が形成されました(図3a)。糖溶液を入れたチュービングを外し、セットアップは完 了します。

層形成した溶液の均質化時間の測定

パラメータをさまざまなに組み合わせ検討しました(表1)。均質化および混合時間の検討は、ビデオで記録しました。

混合時間の測定(均質な溶液の脱色による測定)

層形成した溶液のバッグ内の混合時間を測定するため、バッグ上部のポートからチオ硫酸ナトリウム0.1 mlをピペットで注入しました(図4a)。混合されるとチオ硫酸ナトリウムによってヨウ素が還元され、溶液は無色になります。各検討で溶液が完全に退色するまでの所要時間を記録しました。

結果

均質化および混合に要した時間を表1に示しました。流速は、均質化に最も強く影響しました。流速が小さいほど、均質化および混合にかかる時間が長くなりました。予想された通り、粘度が高いほど、均質化には長い時間を要しました。

典型的な検討(ここでは検討3)の経過を図3および図4に示しています。

写真:均一化試験
図3. 均一化試験(検討3)の結果
(A)測定開始時、(B)~(D)2.7分以内に均質化

写真:退色の結果
図4. 退色の結果(検討3)
(A)チオ硫酸ナトリウムの添加による測定の開始、(B)~(D)0.5分以内にバッグ内の溶液は無色に

5分以内に均質化を達成するために必要な最低流速を見つけるため、最悪の場合のパラメータの組み合わせ(溶液20 L、底部から出て底部へ戻る再循環経路かつ溶液高粘度)で種々の流速を検討しました(図5)。流速が小さいほど、均質化に長い時間を要します(たとえば、バッグ内の層形成した溶液を流速1 L/minで均質化するためには、60分以上を要しました)。5分以内に均質化を達成するために必要な最低流速は3.5 L/minでした。効果的な均質化および混合に最適な流速は4 L/minと判明しました。

グラフ:再循環流速の影響
図5. 20 L ReadyCircuit™ 2-Dバッグ内で層形成した高粘性溶液の混合に及ぼす再循環流速の影響
水色の領域は、メーカーが推奨する最低クロスフロー速度に相当(典型的なタンパク質限外ろ過/透析ろ過[UF/DF])

流路の変更および流速を上げることによって層形成を抑制

均質化および混合試験を確認するために、粘性のブルーデキストラン/アシッドイエロー混合液を用いて別の試験を実施しました。クロスフロー再循環流路を流速1 L/minでの底部出しから底部へ戻る経路から、流速3 L/minでの底部から出て上部へ戻る経路に切り替えたところ、バッグ内の溶液の均質化に対する速効性が確認されました(図6)。バッグ内の溶液は数分以内に均質となりました。アシッドイエロー層を含む透過液は別の容器の方に送液され、ブルーデキストランを濃縮しました。この分離はフィードの流速4.5 L/minで実施し、最終的なブルーデキストラン濃縮液の容量が1 Lとなったところで終了しました。このクロスフロー実験中に層形成を抑制するために用いた流路と流速条件の効果は、以前の均質化および混合時間に関する結果と同等でした。

写真:均質化および混合効果
図6. 均質化および混合の確認
写真は、底部から上部への再循環経路に切り替えて流速を3 L/minに上げた直後の均質化および混合効果を示しています。10,000 NMWCフィルターの透過液中に分離されたアシッドイエローと粘性のあるブルーデキストラン溶液を均質化し、層形成を防ぎました。

まとめ

良好なクロスフロー操作を実現するプロセスの条件は、混合にも効果的でした。良好なクロスフローろ過システムのデザインには、フィードの適切な混合を確保し、また、流路のデザインと再循環速度の考慮をする必要があり、バッグ内溶液の層形成を抑制する必要があります。これは、ステンレススチール製(CIP/SIPを行うシステム)と同じようにシングルユースであるReadyCircuit™2-Dバッグを垂直に使用する場合にも当てはまります。

チューリッヒ応用科学大学(Zurich University of Applied Sciences、ZHAW)について

ZHAWはスイス国内で最も大規模かつ最も生産的である応用科学大学の一つであり、国際的にも知られています。

ZHAWのバイオテクノロジー研究所は、大学レベルでバイオテクノロジー分野の応用研究教育、継続教育コースおよびサービスを提供しています。薬学、食品および生態学分野における応用に重点が置かれています。

  • バイオプロセス技術:植物・動物細胞培養技術、プロセスのモデリングと最適化、システム、プロセスおよびプラント開発、廃棄およびリサイクル技術
  • 微生物学、分子生物学および細胞生物学:微生物の同定およびキャラクタリゼーション、組換えタンパク質の発現、動物細胞のin vitro培養、細胞生物学的診断法および解析
  • 製薬技術:製薬学、医薬品バイオテクノロジー、生薬、品質管理、無菌室およびクリーンルーム技術

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