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Process Analytical Technology
(PAT)

FDAは、バイオ医薬品製造システムの安全性、費用対効果、管理を改善するため、PAT~プロセス全体を継続的に検査および監視する手法~の活用を推進しています。この記事では、PATで用いる各種要素とそのメリットを紹介します。


継続性・自動制御・遠隔監視

米国食品医薬品局(FDA)は、バイオテクノロジー業界や製薬業界におけるProcess Analytical Technology(PAT)採用の推進もしくは要求に向けてガイドラインを作成する作業部会を結成しました。PATは、石油業界や化学業界ですでに10年以上前から幅広く取り入れられています。
簡単に言えば、PATは、場合によっては遠隔地から、プロセスの最終段階に限らず継続的な検査と監視をする技術です。監視は自動制御で行われるのが理想的です。つまり、監視プロセスは自動補正機能で遭遇した問題を解決します(もしくは液漏れや汚染が発生した場合にプロセスを中断します)。継続的な、自動制御による遠隔監視システムは、品質に関連する製品の廃棄や製造時間のロスを最小限にでき、大きなコスト削減をもたらします。さらに重要なことは、PATは従来の最終段階の品質管理試験や検査にかかっていたプレッシャーを軽減し、安全価値を高めることです。

PATシステムの3つの特徴

Process Analytical Controlシステムは、相互に関連する3つの要素で特徴付けられます。すなわち、継続性、自動制御、遠隔監視です。継続的な監視コントロールで早期警報システムが可能になります。自動制御によるコントロールで自動補正システムが可能になります。遠隔監視で一度に複数のプロセスを管理できる効率的な品質保証管理システムが可能になります。この3つの要素は、医薬品の製造コストを最小限に抑え、製品の最終品質を最大限に高めます。継続性、自動制御、遠隔監視の相互作用によって、品質面、安全面、コスト面のメリットが生まれます。

継続的な監視

良く設計されたPATシステムでは、(たとえ不連続であっても)機能的、連続的に流体速度の測定ができます。例えば、製造途中の医薬品の粒子径を継続的に測定し、混合や粘度の不均一性を確認する場合と、組立工程の最後にアウトプットを測定するだけでは明らかに差があります。「継続的な」状況では、ミスや問題をほぼ即時に修正することができます。その結果、コスト削減(規格外のバッチを廃棄もしくは再加工が不要)と安全性の向上(検査や品質保証試験の精度や統計的信頼性への依存の軽減)につながります。
Genetic Engineering News誌の2005年6月号に、PATのオリゴヌクレオチド合成への適応に関する記事が掲載されています1

もっと複雑な状況では、継続的な監視はさらに重要な成果をもたらします。発酵環境では、圧と温度の継続的な監視が製造中の危険な事故や爆発を防ぎます。多段階の生物学的プロセスでは、継続的な監視により、不要なまたは危険な不純物や突然変異体の生成を防ぎます。感染症のワクチン製造では、継続的な監視が意図しない病原体の放出に対する防止策となります。 継続的な監視は、危険な状況、製造上の問題、ミス、意図しない結果を迅速に知らせる早期警報システムとなるので、安全性、コスト管理、品質保証に欠かせない重要な工程です。

自動制御システム

以下に3種類の自動制御の例を示します。

  • ウサギの個体群が食餌供給量を上回ると、十分な食餌を得られない個体は体脂肪を消費し始めます。脂肪含量の変化はホルモン反応の引き金になり、雌ウサギの受胎能が低下して個体数が制限され、最終的に個体数が減ります。

  • 膨張温度の異なる2種類の金属を溶融してできたレバーは、住宅暖房システムのサーモスタット(自動温度調節装置)を制御しています。室内の温度が設定温度に達すると、2種類の金属の特性の違いにより、レバーが湾曲して電気接触部から離れ、回路が遮断されてボイラーの電源が切れます。室内とその2種類の金属が冷えると、レバーが元の位置に戻り、回路がつながってボイラーの電源が入ります。

  • 貯水タンクの注水バルブはフロートアームとつながっています。タンクの水位が上昇してフロートが持ち上がると、アームが注水を止めます。水の使用、蒸発、漏れなどでタンクの水位が低下し、フロートが下がると注水バルブが開きます。

ウサギの個体群、住宅暖房、タンクの水位を調節しているこれらのシステムが自動制御の例です。いずれも自己調節による自動管理機構を有し(初期介入レベルが確立されると)意図的な行動と無関係に作用します。当然ながら、自動制御システムは完璧ではありません。ウサギが増え過ぎたり、室内が熱くなり過ぎたり、タンクから水が溢れることはあります。しかし、これらの問題は外的要因(”open”システム:開いた系)や機械的な破損によって起こるもので、機械的に健全で外部(ウサギの移動など)に曝されなければ、自動制御は”closed”システム(閉じた系)として一貫して正確かつ確実に稼動します。閉じた自動制御システムが人為的な弱点や流れ、ミスと無関係に稼動することが、最も重要だと考えられます。

1回投与量の容器に抗生物質の注射液を充填するプロセスを考えてみます。タンクのフロート式の自動制御システムを利用すると、1回投与量を正確に容器に自動分注することが可能です。最終的な品質保証検査で充填ラインの機械が正しく機能しているか確認できます。自動制御システムは判定、測定、分注を純粋に人の手で行う充填プロセスよりもはるかに進歩しています。自動制御の場合、品質保証上の問題が起こるのはまれで、強いインパクトがあります。充填を人の手で行う場合、精度上の問題が起こりがちで、決して魅力的なプロセスであるとはいえません。充填ライン、製造プロセス、管理を自動制御する生産モデルは、現代的で費用対効果が高く安全な医薬品製造を実現します。

遠隔監視

PAT機能の中でも、プロセスを遠隔監視する機能が問題視されていますが、これはおそらく誤解と考えられます。実際、FDAの調査官が中央(メリーランド州Rochville)からプロセスを遠隔監視するのは理論的に可能ですが、実際に行ったとしても意味がありません(それを防ぐ禁止条例があります)。

しかし、遠隔機能があれば、問題点もしくは疑問点を検討するためにFDAの調査官に見てもらうことができ、事前通知と承認を経てFDAが遠隔的に視察することも可能です。ただし、こうした規制当局の遠隔監視はまれにしか発生しません。現場監視と遠隔監視の実質価値は、まったく方向性が異なります。

製造ラインや設備を現場でしか監視できない場合、製造中に中央で品質保証検査をするのはほぼ不可能です。たとえ測定が継続的であったとしても、品質保証チームがデータを観察するために物理的に移動しなければならない(企業によっては海外への移動を要する)場合、定期的(不連続)にしか評価できません。 遠隔監視システムがあれば、品質保証の技術と経験を備えたプロが各地の処理施設やシステムのデータを中央でリアルタイムに評価できます。

3つの要素

PATシステムを支える3つの要素―継続性、自動制御、遠隔監視―は、三次元グラフで表すことができます。Y軸を継続-不連続、X軸を自動制御-非自己修正(単純に「非自動制御」)、Z軸を遠隔-現場と任意に割り付けます。 各軸の変数を高-中-低のスケールで大まかに評価します。

PATシステムを支える3つの要素 三次元グラフ

1) 継続性

 低: システムは定期的に不連続な測定を限られた回数行う。
 中: システムは不可欠および/もしくは重要な時期に必ず不連続な測定を行う。
 高: システムは定期的かつ頻繁に連続測定を行う。

2) 自動制御

 低: システムは自己修正機能がなく監視のみ行う。
 中: システムは監視を行い、限られた自己修正を行う。
 高: システムは完全に自動制御ですべての変数の監視と自己修正を行う。

3) 遠隔監視

 低: システムは現場監視しかできない。監視者が現場にいなければならない。
 中: システムはアクセス可能なネットワークかダイヤルインを利用して限られた遠隔監視ができる。
 高: システムはウェブまたは同等の機能を用いて完全な遠隔監視ができる。

3次元グラフの右上奥の点(H-H-H)は、システムのPAT機能が最大限であることを示します。PATの規格は年々変化するので、2変数が「高」で残る1変数が「中」以上となるシステムは「PAT互換性」のあるシステムとみなせます。

まとめ

Process Analytical Technology(PAT)は、バイオ医薬品製造システムの安全性、費用対効果、管理を向上するために進化し続けているガイドラインです。PATのガイドラインは、やがて製造プロセスを支える研究所やその他の研究・検査機関、大規模臨床試験の事業部門にも適用されるようになります。PATの基本は、3つの要素によるインタラクティブな監視プロセスです。

  • (不連続ではなく)継続的な監視により、問題点を早期発見し、(安全やコストに影響する製品廃棄につながる)不具合を短期間で改善し、限界に達する前に傾向をいち早くつかむことが可能です。

  • 自動制御による監視は、明らかになった問題点を人の観察、解釈、介入に頼らず自動的に修正することができます。その結果、悪化する状況を確実かつ迅速に直接解消、修正します。

  • 場合によっては遠隔監視(同様に現場監視)を行うことは、高度に熟練した品質保証担当者が常に現場にいなくても観察、介入できることになります。また、現場監視を中央で二次的に遠隔監視することも可能になり、発生した問題に関して規制当局に直接相談する(依頼する)ことも理論的に可能になります。

継続、自動制御、遠隔の3つの変数をグラフにすれば、現時点でのPAT互換性の状況を確認できます。ガイドラインは年々変化しているので、3つの変数の数量化が厳しくなると思われます。これによって、プロセス分析管理の実施が十分な状況であるか、それとも不十分な状況であるかが分かります。

 参考文献

1. Karlberg, P., and Holmberg, L.A. Regulatory -compliant and cost-effective production methods for oligonulcoetide sysnthesis and purification GEN 25 62-63 (2005)
  

 

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