Cytiva

検索のヘルプ

Location:Homeテクニカル情報配信サービス > Pure Protein Club

勝負はこれから!膜タンパク質の精製

イメージ画像

現在、膜タンパク質は医薬品ターゲットの約50%といわれ、今後注目され、ますます研究が盛んになるタンパク質群のひとつです。生体膜中に存在するという性質上、可溶性タンパク質の精製では必要とされなかったような細かい条件検討が必須です。しかし、現時点では構造が明らかになっている膜タンパク質は僅かであり、また可溶化や精製の条件検討におけるスマートなプロトコールが存在しないのが実情です。膜タンパク質を扱う研究者数は急激に増加するにつれ、黄金律の発見はもちろんのこと、条件検討のスピード化もまた強く求められています。

この特集では、条件検討のスピード化を助ける2つのツールをご紹介いたします。


膜タンパク質とは

膜タンパク質(ここでは内在性膜タンパク質を膜タンパク質と表記しています)は、細胞膜の脂質二重膜中に存在するタンパク質です。細胞内外のシグナル伝達や分子の輸送などの機能を担っており、どの生物種にとっても「生きる」上で非常に重要なタンパク質といえます。膜タンパク質は可溶化や組換えタンパク質としての発現が難しいという点から、難精製タンパク質とされています。

膜タンパク質に特有の検討ポイント

機能・構造解析を行うにあたり、膜タンパク質も他のタンパク質同様、組換えタンパク質として発現させることが頻用されています。発現向上のための色々な試みがなされていますが、現段階のところ特に組換えタンパク質への構造上の影響が少ないと考えられるHis-tagが用いられることが多いようです。精製にあたっては可溶化条件が最初の検討ポイントとなります。様々な界面活性剤(Octylglucoside、Dodecylmaltosideなど)を用いて、どの界面活性剤やどのくらいの濃度が適しているか、バッファーの塩濃度はどのくらいが適しているかを検討する必要があります。

例えば1つのサンプルにつき界面活性剤を6種類、その濃度を2ポイント、バッファーの塩濃度を4ポイント検討すると仮定すると組み合わせは48通りになり、膨大な手間になります。条件検討は少量サンプルで行いその後スケールを増やしますが、どれだけこの検討段階を迅速に処理できるかが、精製全体のスピードの決め手となります。

精製用ツールのご紹介

精製スキームはHis-tagを利用したグラジエント溶出精製の後に、ゲルろ過による目的分子の回収を行う方法です。二段階精製で純度が不十分な場合は、二段階目としてイオン交換を行いその後にゲルろ過を行うケースも多いです。

可溶化条件のスクリーニングに ~His MultiTrap™ FF, HP

条件検討の効率化のために、最初のHis-tag精製ではHis MultiTrap™のような多サンプルを同時に処理できる方法を選択することをお薦めします。His MultiTrap™は96ウェルフォーマットのNi Sepharose™充填済みのプレートで、遠心、吸引のいずれのプロトコールにも対応しています。

分子均一性のスクリーニング ~ゲルろ過カラムSuperdex™ 5/150GLシリーズ~

ゲルろ過は分子量をもとに分画を行う手法ですが、分子量でわける他の手法(SDS-PAGE)と異なり、溶液中の目的分子の状態を非変性条件で確認できる方法でもあります。すなわちアフィニティー精製後のフラクション中に、凝集体や分子の一部が欠損しているものが混合しているか、それとも均一な状態であるかはピークの形状を見ることで一目瞭然となります。凝集体は大きい分子として目的物とは別のピークとなり、また欠損部分のある場合は左右対称性の低いピークとして現われます。界面活性剤種・濃度、バッファー塩濃度等と目的タンパク質との相性をみるのにも、とても適した方法と言えるのです。

従来ゲルろ過法は“長細いカラムで分離時間がかかる”イメージですが、条件検討の段階で使用するなら出来るだけ使用するバッファー量を抑え、短時間でクロマトグラフィーが終了するという条件が望まれます。

本年販売開始したSuperdex™ 75 5/150 GLカラムSuperdex™ 200 5/150 GLカラムは、従来のカラム(Superdex™ 10/300GLシリーズ)と比較しカラム径5mm、ベッド高15cmと大幅に小さなカラム(従来のスタンダードサイズカラムの1/8のゲル量)となっています。そのためバッファーの消費量を抑えることができ、同時に精製時間も約20分と大幅短縮を可能としました。短いカラム=分離能が低い、という懸念もあるかも知れませんが、従来のカラムに近似する分離能を有しています。詳細は下記データファイルをご参照ください。

難精製タンパク質の精製を行うには試行錯誤がつきものです。様々な条件検討が必要になりますが、条件検討に適したツールを使用することで、より早く結果を出すことにつながると考えています。


お問合せフォーム

※日本ポールの他事業部取扱い製品(例: 食品・飲料、半導体、化学/石油/ガス )はこちらより各事業部へお問い合わせください。