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お客さまの声・データ紹介 - 大阪大学 学生実習採用者インタビュー

2011年よりCytivaは、大阪大学工学研究科の井上豪教授、溝端栄一助教と共同で、クロマトグラフィー教育プログラム構築のトライアルを行ってきました。カラムクロマトグラフィーによるタンパク質の分離精製と検出を含む基礎実習コース開発を行い、実際に応用生物工学コース3年生の物理化学実習の一部として実施するサポートをしてまいりました。これまでの2年間のトライアルを経て、学生実習の内容、手順、実習書等が整いましたので、先生方のご了承のもと、他の大学の皆さまにも活用いただけるよう、公開させていただく運びとなりました。
また、このコラボレーションのきっかけや、学生実習を実施してみた感想、および、他大学で生化学の教育を担当している先生方へのメッセージを併せてお伺いしましたので、ご紹介いたします。

タンパク質の学生実習について、弊社に声をかけてくれた背景やその頃のニーズを教えていただけますか?

写真大阪大学工学研究科の応用化学専攻では、共通のX線回折装置を用いた低分子の単結晶構造解析のニーズが年間300件を超えており、長年に渡り、X線回折装置メーカーである株式会社リガクのサポートをいただいてきた経緯があります。応用化学コースの学部4年生が各研究室に配属されて以降、本格的な研究を速やかに始められるように、有効な教育・実習を行う必要性から、2年生対象の物理化学実習の「X線回折」の項目を一新し、4年生以降もバイブルとして使用可能な詳細な学生実験マニュアルを作成しました(実際のマニュアルは、担当の松村准教授が作りました)。そのおかげで、X線回折装置については、学生がX線解析技術を早くに習得することで、実験の効率が上がり、また講師陣の手間も削減され、大変助かっています。学生は、研究室に配属された後に、学生実習のことを思い起こしながら、経験とマニュアルを元に卒業研究のための実験に役立てることができます。残念ながら、机上の勉強についてはほとんど頭に残りませんので、あのマニュアルは非常によく作られていると思います。
こうした応用化学コースでの前例を受け、応用生物工学コースにおいても、貴社の協力をいただくことで、学生たちが研究に欠かせないタンパク質精製のクロマトグラフィー技術に早い段階から親しむことができると考えました。特に、社会に出てからも就職先で使うことになる最先端の機器ÄKTA™システムに触れて、使い方を習得してもらいたいと思っていました。しかし、最先端の機器での学生実習コースを立ち上げるのは、大学側だけでは難しく、貴社のサポートがどうしても必要でした。


写真

弊社とのコラボレーションをする前の学生実習の内容はどんなものだったのでしょうか?

以前は低分子化合物のコンピュータ解析などの化学寄りの実習を行っており、応用生物コースの学生さんが4年生になって必要になる技術の習得からは程遠いものでした。たまたま応用化学専攻に所属している我々の研究室が応用生物工学コースの学生さんを対象とした学生実習も担当していたことから、我々の専門分野である「タンパク質のX線結晶構造解析」に関わる実験項目を新設し、少しずつ変更してきたという経緯があります。ただ、酵素反応や結晶構造解析はありましたが、一連のつながった実験ではなく、断片的であり、精製の実習は含まれていませんでした。精製実習を加えることによって、タンパク質研究の一連の操作を結びつけることができました。

通常、学生実習はどのような流れで準備を進めているかお聞かせいただけますか?

学生実習の内容は、5年に1度程度の頻度で、時代に合わせた実験手法や装置を取り入れるように見直しをしています。例えば、時代の流れに合わせて、現実的には行わない実験は除き、例えば質量分析の実習を導入したりしています。
新しい実習内容を準備するには、1~3ヶ月くらい、もしくはそれ以上かかります。すでに実績のある実習については、試薬や機器の準備に3日くらいあれば何とかなるでしょう。

今回、弊社と共同で実習内容を組み立てていったことで、良かったことはどんな点でしょうか?

新しいサンプルにおいて、カラムでどう分離できるかは結構工夫のいるところであり、条件を決めるところは貴社のサポートが必要でした。酵素反応でも、最初はなかなか同じ測定を行っても思うように再現しなかったことがあります。この精製実験では、マニュアル通りに実験を行えば、実験がうまくいくようにまとまりました。
また、今までは実験をしてレポートを提出して終わりという流れでしたが、理解度を確認するというステップ(理解度確認テストの実施)を入れてもらったのは、学生に理解を深めてもらう上で特に良かったと思います。

実際にこのクロマトグラフィーの学生実習を実施してみてのご感想はいかがですか?

写真 実験内容がうまく組み立てられており、どの班も時間通りに終了することができました。
学生の学生実習に対する満足度は、これまでの実習に比べて高かったです。普段学生実習では使えない最先端の機器を使えるという点も、満足度が高かった理由のひとつだと思います。前述の学生実習後の理解度テストは学生の関心を引き付けるのにとても役に立って、ポイントが高いです。実験の手順だけでなく、基礎知識を学んでおくことは重要だと思うので、その確認もできたところが良かったです。
また、事前にTA(ティーチングアシスタント)へのトレーニングを設けてもらったことは、彼らが実際に第1線の研究の場で活躍している立場として、この機会に学ぶことが多かったと思います。


今後のクロマトグラフィーの学生実習はどのようにしていきたいとお考えですか?

可能な限り、この内容を続けていきたいです。ただし、学生実習に最先端の機器をそろえるのは機材の調達、セットアップを考えると、続けていくのには課題が残ります。

弊社では「ライフサイエンスアカデミー」というサイトを立ち上げ、そこでクロマトグラフィーの基礎、原理を学べるコンテンツをお届けしています。この学生実習にもお役に立てますでしょうか?

学生実習の事前学習として使えそうですね。クイズが用意されているので、若い世代には受け入れられやすいと思いますし、そこで理解度が確認できるところが良いです。学生実験とのセットというのは他にはないコンセプトですし、大きな学習効果が期待できます。

学生実習も含め、今後の教育についてご意見をお聞かせください。

斬新な講義や将来社会に出てから直接役に立つ内容を提供していく必要があると考えています。その点で、研究に産学連携があるように、教育においても企業と連携した教育パッケージがあってもいいと思います。学生が就職のことを考えるにあたっても、今後実験していく際にサポートしてもらうにしても、企業と一緒に協業することが必要になってくると考えていますので、これまで以上に企業との上手な連携を考えたいと思っています。

他の大学で実習の担当をしている先生方へぜひメッセージをお願いします。

汎用性の高い装置については、最先端の機器を使って学生実習を行うことで、研究室に配属後に研究をスタートするときにも、指導の手間が省けます。1つの大学内に医・薬・理・工の様々な研究科のほか、種々の附属の研究所があり、多くの研究室でタンパク質を扱っており、共通で装置を導入したりして装置が揃えられるのであれば、ぜひ学生実習に導入することをおすすめします。

ご協力いただき、ありがとうございました。


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