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マウス骨髄中における血管領域、CD150陽性細胞の定量的解析法

はじめに

骨髄中にはさまざまな細胞により造血幹細胞の微小環境が構築されています。その中でも現在、造血幹細胞ニッチ細胞として血管系ニッチが注目されています。本研究は、骨髄切片中の血管内皮細胞を抗Ve-Cadherin抗体を用い免疫染色しました。結果、骨髄中における血管内皮細胞の局在および陽性率が明らかとなりました。

またLnk欠損マウスは造血幹細胞および血小板の増加が認められていると報告されています。今回、造血幹細胞と血小板を放出する巨核球で強く発現されている細胞表面マーカーである抗CD150抗体を用いて骨髄切片を免疫染色し解析しました。

IN Cell Analyzer 2000を用いることで細胞切片全体の画像が自動で取得できました。その画像を解析ソフトウェアIN Cell Investigatorで解析し、目的細胞の陽性率、面積を自動的に定量しました。

使用した製品

  • IN Cell Analyzer 2000
  • IN Cell Investigator

IN Cell Analyzer 2000で取得したマウス骨髄切片の画像
IN Cell Analyzer 2000で取得したマウス骨髄切片の画像
青:DAPI、赤:CD150陽性細胞のマージ

1. マウスの骨髄切片中の血管マーカーの定量

サンプルおよび抗体

  • C57BL/6マウス、抗VE-cadherin抗体
  • サンプル:VE-Cadherin染色マウス骨髄切片

方法

マウスから大腿骨を採取して直接、凍結ブロックを作製しました。作製した凍結ブロックを7 µmの厚さで骨髄組織をスライスし、スライスしたマウスの骨髄切片に対してDAPIによる核染色、VE-Cadherinの染色を行いました。
染色した切片の画像をIN Cell Analyzer 2000で取得しました。

対物レンズは×10を用い、全20視野の画像を自動で取得しました。その後画像解析ソフトウェアIN Cell Investigatorを用いて解析しました。

結果

IN Cell Analyzer 2000で取得した画像より、骨髄中の髄部分、核、VE-Cadherin染色陽性部分を画像認識しました(図1B)。
その結果、髄部分の面積に対するVE-Cadherin染色陽性率は3.69%でした。

図1 骨髄切片の画像
図1 骨髄切片の画像
A:取得した20視野の画像。青:DAPI、緑:VE-Cadherin染色のマージ画像。
B:Aの画像を画像認識したもの。青のラインはDAPIで染色した核領域、赤のラインはVE-Cadherin陽性領域を示します。
C ~ E:Aの1視野のみ(オレンジ色で囲った視野)の拡大画像。
F、G:C、Dを一部を拡大した画像。青のラインはDAPIで染色した核領域、赤のラインはVE-Cadherin陽性領域を示します。

2. マウスの骨髄切片中のCD150陽性細胞の定量

サンプル

  • Wild Typeマウス骨髄切片
  • Lnk-ノックアウトマウス(Lnk-KO)骨髄切片

方法

1と同様の方法で骨髄組織のスライスを作製しました。スライスしたマウスの骨髄切片に対してDAPIによる核染色、CD150マーカーの染色を行いました。染色した切片の画像をIN Cell Analyzer 2000で取得しました。対物レンズは×10を用いました。その後画像解析ソフトウェアIN Cell Investigatorを用いて解析しました。

結果

IN Cell Analyzer 2000で得られた画像(図2)を用い、Wild Typeマウス骨髄切片とLnkノックアウトマウスの骨髄切片それぞれでCD150陽性細胞の測定を行いました。
画像解析ソフトウェアInvestigatorを用い、髄領域を抽出し、その中の核、CD150陽性細胞を認識することができました(図3)。
総細胞数に対するCD150陽性細胞数の割合と髄領域に対するCD150陽性細胞面積の割合を算出しました。いずれにおいてもLnk-KOマウスではWTに比べ2倍以上の増加がみられました(図4)。

図2 IN Cell Analyzer 2000で取得したマウス骨髄切片の画像
図2 IN Cell Analyzer 2000で取得したマウス骨髄切片の画像
A  Wild Typeマウス骨髄切片。青:DAPI、赤:CD150のマージ画像
B  Lnkノックアウトマウスの骨髄切片。青:DAPI、赤:CD150のマージ画像

図3 画像解析の方法
図3 画像解析の方法
A:画像認識をしたwild typeマウス骨髄切片の画像。緑のライン:髄領域、青のライン:DAPIで染色した核領域、赤のライン:CD150陽性細胞を示します。
B ~ D:Aの1視野のみを拡大したもの。BはDAPI染色、CはCD150染色、DはDAPI(青)、CD150(赤)のマージ画像。
E、F:B、Cの一部を拡大した画像。青のラインはDAPIで染色した核領域、赤のラインはCD150陽性細胞を示します。
画像解析ソフトウェアInvestigatorにより、核が確認できる髄の領域(緑のライン)を設定し、その中の核(青のライン)、CD150陽性細胞(赤のライン)を測定しました。

図4 測定結果
図4 測定結果
CD150陽性細胞数の総細胞数に対する割合とCD150陽性細胞面積の髄領域に対する割合を算出しました。
いずれもLnk-KOマウスではWTに比べ2倍以上の増加がみられました。

まとめ

  • IN Cell Analyzer 2000を用い、マウス骨髄切片の蛍光画像取得を自動的に行うことが可能でした。その画像から、マウス骨髄中の髄部分、核、目的細胞の定量を行えました。

データご提供

東京大学医科学研究所 幹細胞治療分野
ERATO 中内幹細胞制御プロジェクト 小動物モデル研究グループ
山崎 聡 先生、中内 啓光 先生


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