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DIGE 道場 第10回
成功するIn-gel digestion法 ~実践編~

第10回 もくじ

  1. はじめに
  2. In-gel digestion操作 1日目(その1) (本ページ)
  3. In-gel digestion操作 1日目(その2)
  4. In-gel digestion操作 2日目
  5. 最後に: In-gel digestionのポイント

Dr. 近藤のコラム
→コラム第10回 「画像解析ソフトウェアはどれがいいのか」

2. In-gel digestion操作 1日目(その1)

●準備するもの

調製済みの冷蔵保存試薬 ※図1参照

  • 50% メタノール
  • 50% アセトニトリル
  • 100% アセトニトリル
  • 50 mM Ammonium Bicarbonate Minimum(以下 ABM)
  • 100 mM ABM

その他の準備 ※図2、図3参照

  • 超音波水槽(超音波洗浄機、US-2、エスエヌディ社、アズワン社)に半分ほど水を入れる。
  • 5 L ビーカーに氷を用意する。
  • バイオシェーカー(BioShaker M・BR-022、タイテック社)の電源を入れ、HEATERを37℃に設定する。

 

図1

図1 冷蔵庫から試薬を取り出す

50% メタノール、50% アセトニトリル、100% アセトニトリル、50 mM Ammonium Bicarbonate Minimum(以下 ABM)、100 mM ABMを冷蔵庫から取り出す。

この溶液はあらかじめ作製して4℃に保存しておく。専用の瓶を用意する。

図2

図2 超音波水槽と氷の準備

超音波水槽はゲル片を洗浄するステップで使用する。かならずしもこの装置でなくてもよいのだが、たまたま手元にあったのでこれを使用している。

氷は超音波をかけている間、水温が上昇するのを防ぐために入れる

図3

図3 バイオシェーカー

「バイオシェーカー」とは要するに恒温インキュベーターである。トリプシン処理を一晩するときに使用する。どの機種でも構わないのだが、無駄なくちょうどよいサイズということでこの機種を使っている


●In-gel Digestion操作

以下の操作はクリーンベンチ内で行う。通常の実験台の上ではまず止めた方がいい。銀染色でようやく見える程度のスポットが同定できる感度の質量分析装置であれば、空気中からコンタミしてきたケラチンが間違いなく検出されるだろう。

図4

クリーンベンチでの操作

筆者のラボではクリーンベンチでの作業であっても、白衣、マスク、二重手袋、帽子、は必須としている。可能であれば完全クリーンルームとしたいところであるがかなわないので、せめて人通りの少ない行き止まりの部屋をin-gel digestionのスペースに充てている。

図5

手袋の装着

長手袋の上に通常の長さの手袋をする。通常の長さの手袋の方は頻繁に交換するようにする。


ステップ1

スポットピッカーで切り取ったゲルを浸していた超純水を、8連ピペットマンで吸い取り捨てる。

図6

図7

8連ピペットマンによる液体除去

使っているのはPCRプレートなのだが、扱いやすいように2列ずつに切って使っている。低吸着のプレート、チューブ、チップはとくに使っていない。チップの先端がゲルに激しく当たったりゲルを突き刺したりしないように、プレートを見える位置に持ち上げて目視しながら液体を除去するようにする。


ステップ2

50% メタノール 100 µlを加え、プレートにアルミシールをする。超音波水槽に氷を入れて超音波10分。その後、液体を捨てる。この操作を4回繰り返す。

図8

図9

50% メタノールを加えているところ

リザーバー(Reagent Reservoirs、25 ml、Cat # 8094、Thermo Scientific™社)に50% メタノールを入れておいて、100 µlずつ分注していく。

図10

図11

プレートにアルミシールをする

端まで折り込んでしっかり密封する。次に超音波水槽に入れたときに中に氷水が入らないために。

図12

図13

超音波水槽に入れるところ

フロートにプレートをセットして10分間インキュベートする。

図14

プレートに付着する水滴の除去

プレートの下の水滴を除去する。クリーンベンチ内を清潔にするためである。プレートに水滴がついた状態での操作は汚染のもとである。

図15

図16

8連ピペットマンによる液体の除去2

アルミシールをすべていったんはがしてから8連ピペットマンで液体を捨てる。アルミシールをはがすときに力余ってチューブの中の液体が飛び散らないように注意する。

ゲル片を突かないように、見える位置に持ち上げて目視しながら液体を除去するようにする。液体を廃液入れに捨てるとき、捨てた液体が跳ね返るおそれがあるので、廃液入れとプレートは離しておくようにしている。


ステップ3

50% アセトニトリル 100 µlを加えて、室温10分で放置し、そのあと液体を捨てる。

ステップ4

100% アセトニトリル 100 µlを加えて、室温10分で放置し、そのあと液体を捨てる。

(解説)

この操作ではゲル片の「脱水」を行っている。ゲルを有機溶媒でぎゅっと小さくして、ゲル中に含まれているはずの電気泳動バッファーを絞り出す。高野豆腐やスポンジを絞っているイメージである。有機溶媒の濃度を2段階に分けているのは、急激な脱水がゲルを破壊することを防ぐためである。


ステップ5

50 mM ABM 100 µlを加えて、室温で10分間放置し、その後、液体を捨てる。

(解説)

この操作は「膨潤」である。ステップ3と4でぎゅっと絞られたゲルに、トリプシンでの切断に必要なバッファーを浸みこませる操作である。


ステップ6

100% アセトニトリル 100 µlを加えて、室温で10分間放置し、そのあと液体を捨てる。

ステップ7

50 mM ABM 100 µlを加えて、室温で10分間放置し、そのあと液体を捨てる。

(解説)

ステップ6と7はそれぞれ「脱水」と「膨潤」である。ステップ3、4、5と同じ目的である。


ステップ8

50% アセトニトリル/50 mM ABM(100% アセトニトリル 10 ml + 100 mM ABM 10 ml)を100 µl加えて、室温10分間放置し、そのあと液体を捨てる。

ステップ9

100% アセトニトリル 100 µlを加えて、室温10分間放置し、液体を捨てる。この操作は2回行う。

ステップ10

最後にアセトニトリルをしっかりと除くために風乾させる(約1時間)。

図17

図18

脱水操作の様子

ステップ8、9、10は「脱水」である。次はトリプシン溶液で「膨潤」を行うので、しっかり乾かしておきたい。写真は乾燥させているところ。クリーンベンチ内なので覆いはとくにしていない。

(次ページへつづく)

次へ 3. In-gel digestion操作 1日目(その2)

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