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Location:Home実験手法別製品・技術情報タンパク質サンプル調製・前処理

第3章
目的タンパク質の検出性改善(5)

アフィニティーベースのタンパク質濃縮およびタンパク質サブグループの濃縮(1)

アフィニティーベースの濃縮手法は、1つの画分に含まれる一定のタンパク質グループの濃度を高める手法で (10、11、17)、標的をさらに絞ったタンパク質分画といえます。この手法は、(一定レベルの経験的な知識または仮説に基づく)特定のタンパク質のサブグループに焦点を当てた研究ストラテジーとして使用されます。特定のタンパク質グループに対し特異的アフィニティーを示すアフィニティー結合物質(リガンド)を固相支持体(例:クロマトグラフィー担体または磁気ビーズ)に固定化して目的のタンパク質グループを結合させ、他のタンパク質はすべて素通り画分または洗浄画分に分画します。結合画分を溶出すると高度に濃縮された目的タンパク質グループが得られ、これを後続の分析に使用できます。後続の分析で使用する試薬や機器のフォーマットにあわせて、多量の初期サンプルを少量に溶出すれば、低存在量タンパク質の濃縮に極めて有用な手法となります。特異的結合はタンパク質の三次構造に依存するため、ほとんどの場合、アフィニティーベースの濃縮は変性条件には適合しません。

この方法で以下のタンパク質を濃縮できます。

  • γ免疫グロブリン-リガンドはプロテインAまたはプロテインCを使用します。
  • ビオチン化タンパク質-ストレプトアビジンを特異的結合に使用します。
  • リン酸化タンパク質およびリン酸化ペプチド-リガンドとして、リン酸化エピトープ/特異的抗体(第1章に例があります)、金属キレートまたは金属酸化物などを使用します。
  • グリコシル化タンパク質-一般にさまざまなレクチンをリガンドとして使用します。
  • キナーゼ-ATP類似体をリガンドとして使用します。
  • DNA結合タンパク質-リガンドとして、ヘパリン、非特異的および配列特異的DNAなどを使用します。
  • タンパク質複合体-タンパク質複合体中の一要素に対する抗体をサンプル供給源のリガンドとして使用します。複合体の構成要素と考えられるタンパク質がタグタンパク質として発現している遺伝子組換え系の場合、アフィニティータグをリガンドとして使用します。「Purifying Challenging Proteins(精製が難しいタンパク質のための精製ハンドブック)」にタグ法による複合体濃縮の詳細が示されています(コード番号:72HB1301(日本語版)、28909531(英語版))。
  • タンパク質異性体-保存領域に対する抗体をリガンドとして使用できます。
  • タグ組換えタンパク質-タグタンパク質の精製は、一般にタグとリガンドとの特異的相互作用に基づいて行われます。広く使用されている4種類のタグは、ポリヒスチジン(ヒスチジン)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、Strep-tag™ II、マルトース結合タンパク質(MBP)です。

アフィニティーベースタンパク質濃縮用の製品

Cytivaの具体的な製品を表3.1に示します。これらの製品は、複雑なサンプル中の単一のタンパク質の分取や翻訳後修飾を受けたタンパク質の濃縮など、広範囲のアプリケーションに使用できます。これらの製品にはクロマトグラフィーベースのいくつかのフォーマットがあり(図3.6)、磁気ビーズもあります(図3.6、図3.7)。

表3.1 アフィニティーベースタンパク質濃縮用のCytiva製品

Product Mechanism Suitable samples Sample preparation format Sample volume
NHS HP SpinTrap™ アフィニティーリガンドの第一級アミンを介したカップリング 細胞ライセート、血清、血漿 SpinTrap™: Minispin columns (microcentrifuge) 0.2-0.6 ml
NHS Mag Sepharose™ Magnetic beads (MagRack 6) 0.01-50 ml
HiTrap™ NHS- activated HP HiTrap™: 1 and 5 ml columns (LC system or syringe) > 0.5 ml
Streptavidin HP SpinTrap™ ビオチン化生体分子を介したカップリング 細胞ライセート、血清、血漿 SpinTrap™: Minispin columns (microcentrifuge) 0.2-0.6 ml
Streptavidin HP MultiTrap™ MultiTrap™: 96-well plate (centrifugation) 0.1-0.6 ml
HiTrap™ Streptavidin HP HiTrap™: 1 and 5 ml columns (LC system or syringe) > 0.5 ml
Protein A products1 プロテインAへの抗体結合 血清、血漿、腹水、細胞培養上清 SpinTrap™: Minispin columns (microcentrifuge) 0.2-0.6 ml
  MultiTrap™: 96-well plate (centrifugation) 0.1-0.6 ml
  Magnetic beads (Test tube, MagRack 6) 0.01-50 ml
HiTrap™ Protein A HP HiTrap™: 1 and 5 ml columns (LC system or syringe) > 0.5 ml
Protein G products1 プロテインGへの抗体結合 血清、血漿、腹水、細胞培養上清 SpinTrap™: Minispin columns (microcentrifuge) 0.2-0.6 ml
  MultiTrap™: 96-well plate (centrifugation) 0.1-0.6 ml
  Magnetic beads (Test tube, MagRack 6) 0.01-50 ml
HiTrap™ Protein G HP HiTrap™: 1 and 5 ml columns (LC system or syringe) > 0.5 ml
Immuno- precipitation Starter Pack プロテインAまたはGへの抗体結合 血清、血漿、腹水、細胞培養上清 Test tube (microcentrifuge) 0.05-1.5 ml
Phos SpinTrap™ Fe Fe3+ IMACによるリン酸化ペプチド濃縮 リン酸化タンパク質の酵素消化 Minispin columns (microcentrifuge) 0.04-0.6 ml of diluted sample 1:1
TiO2 Mag Sepharose™  金属酸化物アフィニティークロマトグラフィーによるリン酸化ペプチド濃縮 リン酸化タンパク質の酵素消化 Magnetic beads (test tube, MagRack 6) 0.1-0.25 ml

1 これらの製品はスモールスケールでの抗体精製(多量のイムノグロブリン)や選択した抗体を使用した免疫沈降に使用できます。

図3.6
図3.6 HiTrap™カラム(A)、SpinTrap™カラム(B)、MultiTrap™プレート(C)、Mag Sepharose™磁気ビーズ(D)

HiTrap™カラムはシリンジ、ポンプ、またはÄKTA™microなどのクロマトグラフィーシステムで使用できます。表3.2にHiTrap™カラムの流量規格を要約します。

表3.2 HiTrap™カラムの流量

Maximumflowrate1
1 ml column 4 ml/min
5 ml column 15-20 ml/min
Recommended flow rate2
1 ml column 0.2-1 ml/min
5 ml column 0.5-5 ml/min

1 H2O at 25°C
2 クロマトグラフィーの手法によります。

最大圧は3 bar(43 psi、0.3 MPa)です。

HiTrap™製品の1つであるHiTrap™ Albumin & IgG Depletionカラムのプロトコールは、この章の前半の記述をご覧ください。

SpinTrap™カラムは標準的なラボ用微量遠心機に使用する設計となっています。

フタとボトムキャップはインキュベーションおよび溶出のステップで使用しますが、平衡化と洗浄のときには使用しません。遠心分離する前にボトムキャップを外し、ねじ式のフタをわずかにゆるめます(フタを約90°左に回します)。

インキュベーション前にカラムを上下反転させて混和し、担体を十分に懸濁させてしてください。インキュベーションは一般に室温で行います。ただし、ゆっくりと反応させるほうが好ましい場合には、室温よりも低い温度でインキュベーションを行っても構いません。

溶出ステップを行うときには、SpinTrap™カラムを手で反転させて混和します。

MultiTrap™プレートは比較的スループットが高い手法向けの96ウェルのプレートです。この製品は遠心分離または真空吸引に使用する設計となっており、ロボットシステムで使用できます。ただし、脱塩・バッファー交換用のPD MultiTrap™ G-25は遠心分離専用です。第5章でMultiTrap™プレートについて詳述します。

Mag Sepharose™磁気ビーズは、さまざまな機能を持つ磁気セファロースビーズです。このビーズは外部磁場でのみ磁性を持つため、遠心機やクロマトグラフィーシステムが必要なく、小スケールの実験にきわめて有用です。このビーズは親水性であるため、目的タンパク質との結合時、洗浄時および溶出時に水溶液中に容易に拡散します。ステップとステップの間に磁石でビーズに磁気を印加して、ビーズをチューブ壁に引き寄せます(図3.7を参照してください)。Protein A Mag Sepharose™ビーズまたはProtein G Mag Sepharose™ビーズを使用した抗体免疫沈降の例を以下に示します。

図3.7
図3.7 磁石に近づけるとMag Sepharose™ビーズがチューブの壁に引き寄せられます(左)。磁石を外すとビーズが液中に拡散します(右)。

液除去ステップごとに、磁石を定位置にセットしたマグネットラックを使用してください。

液、洗浄バッファー、溶出バッファーなどを加える前に、磁石ラックから磁石を外してください。液を加えた後、微量遠心チューブをボルテックスするか手で反転混和してビーズを再懸濁させます。

複数のサンプルを処理する場合には、マグネットラックごと手で反転混和することをお勧めします。

インキュベーションステップでは、上下反転させるか、1.5 mlの微量遠心チューブに適した卓上シェーカーを使用してゲルビーズを十分に再懸濁し、溶液中にビーズが拡散した状態を維持してください。

目的タンパク質の分解を防ぐためにプロテアーゼ活性の阻害が必要となることがあります。CytivaではProtease Inhibitor Mixを提供しています(第2章第2回を参照してください)。

洗浄バッファーを使用する最後のステップでは、磁気ビーズ溶液を新しい微量遠心チューブに移します。この操作により、微量遠心チューブに非特異的に結合したタンパク質の溶出を防ぎます。

溶出後のサンプル分解を防ぐために、溶出画分を冷凍庫で保管するか、SDS-PAGEを行う場合にはサンプルバッファーを添加します。

 

>>目的タンパク質の検出性改善(6)

タンパク質サンプル調製ハンドブック目次3章 References 略号と用語、記号解説


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