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バイオダイレクトメール vol.30 Technical Tips
<組換えタンパク質精製をはじめよう>Part 2

前号より3回のシリーズで、タンパク質の精製手法の一つである、組換えタンパク質を利用したアフィニティークロマトグラフィーの基礎講座をお送りしています。今回は、組換えタンパク質の代表例、GST融合タンパク質についてです。

GST融合タンパク質とは

GST融合タンパク質は、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子の3'-末端に目的の遺伝子を挿入して発現させます。弊社の大腸菌用発現ベクター pGEXシリーズは、Schistosoma japonicum (日本住血吸虫)由来のGST(26 kDa)のC末端に目的のタンパク質が結合するように設計されています。GST融合タンパク質発現には以下のような利点があります。

  • GSTがキャリアーとなり、高い溶解性が期待できます
  • GST活性やGSTに対する抗体を用いて容易に検出できます
  • グルタチオンとの親和性を利用して簡単に精製できます
  • 穏やかな条件で精製が可能なため、タンパク質の変性を最小限に抑えられます
  • プロテアーゼ(PreScission™ Protease、ThrombinやFactor Xa)消化により目的のタンパク質だけを切り離すことができます

pGEXベクターに共通の特徴

pGEXベクターは、GST 遺伝子の下流にプロテアーゼ認識部位とマルチクローニングサイト(MCS)を持っています。目的の遺伝子の組込みが容易なだけでなく、発現したGST融合タンパク質から目的のタンパク質をプロテアーゼにより切り出すことができます。

また、高レベル発現系のtacプロモーター(Ptac)を採用し、IPTG添加によるタンパク質の誘導発現を行うことができます。laq Iq遺伝子をプラスミド上に持つので宿主大腸菌を選びません。

すべてのベクターには、宿主大腸菌としてプロテアーゼ欠損株のBL21(F-, ompT, hsdS (rB-, mB-), gal, dem)が添付されています。

pGEXシリーズの全ベクターのマルチクローニングサイトとプロテアーゼ認識配列についてはFAQ(製品Q&A)をご参照ください。

ベクター選択ガイド
プロテアーゼ ベクター MCS*1内の制限酵素サイト数 フレーム その他の特徴
Thrombin
  • 安価
  • 非特異的切断の可能性
pGEX-4Tシリーズ 6 3種類*2 -
pGEX-2T 3 - -
pGEX-2TK 3 - プロテインキナーゼ認識部位有*3
pGEX-1λT 2 - EcoR I消化・脱リン酸化済*4
Factor Xa
  • 高い切断特異性
pGEX5Xシリーズ 6 3種類 -
pGEX-3X 3 - -
PreScission™ Protease
  • GST融合プロテアーゼなので精製と同時に除去可能
  • 反応至適化が5~15℃
pGEX-6Pシリーズ 6 3種類 -

*1 MCS(マルチクローニングサイト)
*2 1塩基ずつ読み枠をずらした3種類のベクターがあります。目的遺伝子のコドンとインフレームになるものを選択してください。
*3 発現されたタンパク質をprotein kinaseと[γ-32P]ATP(コード番号:PB10235、PB10233)により標識でき、シンチレーションカウンターあるいはオートラジオグラフィーで検出できます。
*4 ベクターをEcoR Iで消化後、脱リン酸化しています。EcoR Iでλgt11などのcDNAクローニングベクターに組み込んだDNAを直接サブクローニングするのに便利です。

GST融合タンパク質の精製

GST融合タンパク質は、さまざまな発現ベクター(例:pGEXシリーズ)により大腸菌を宿主として発現されます。すべての発現ベクターにはプロテアーゼ認識配列が導入されているので、プロテアーゼ消化を行うことで目的のタンパク質のみを得ることができます。発現に使用したベクターにより精製のスキームが異なります。以下に示す流れにしたがって、カラムあるいはバッチ法により操作を行ってください。

off-column消化(GST融合タンパク質を溶出後にプロテアーゼ消化する場合)

on-column消化(GST融合タンパク質をカラム中でプロテアーゼ消化する場合)

※次回のTechnical TipsではHis-tagタンパク質を取り上げます。

組換えタンパク質精製をはじめよう(3)


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