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クロマトグラフィー - バイオサイエンスを支える基礎技術
バイオダイレクトメール Technical Tips vol.48

クロマトグラフィーは「色の記録」といった意味の言葉です。
では、なぜ「色」なのでしょうか?

19世紀中期に始まった葉緑素の研究から、葉緑素は複数の色素から成り立っているのではないかと推測されていました。20世紀初頭、多くの植物学者が葉緑素の組成を調べていましたが、その中に、ロシアの植物学者ミハイル・ツヴェットがいました。ツヴェットは試行錯誤の末に炭酸カルシウムのカラムと各種溶媒を用いて色素を分離することに成功し、1901年にそれを報告しています。最初の論文は1903年でしたが、クロマトグラフィーという言葉が最初に使われたのは、今からちょうど百年前の1906年でした。

しかし、ツヴェットの研究報告からクロマトグラフィーが研究手法として急速に広まった、ということはなく、残念ながらツヴェットの手法は大半の研究者に無視されていました。彼らは、クロマトグラフィーは精密な解析には使えないと考えており、実際、1915年にクロロフィルや他の植物色素の研究によりノーベル賞を受賞するリヒャルト・ヴィルシュテッターも、ツヴェットの手法でクロロフィルの分離を試みましたが失敗しています。

こうして、長きにわたって顧みられることのなかったツヴェットのクロマトグラフィーですが、後にカロテノイドと酵素の研究によりノーベル賞を受賞することになるリヒャルト・クーンと、彼の助手のエドガー・レデラーの功績によって見直されることになります。当時、クーンは純度の低い試料に悩まされていました。その時、前述のヴィルシュテッターがクーンにツヴェットの著書のドイツ語訳を送り、クーンの助手のレデラーがクロマトグラフィーの改良に取り組みました。

レデラーが改良したクロマトグラフィーによって、クーンのグループは多くの天然カロテノイドやその他の成分を単離し、また1930年代はビタミンの研究がブームになっていたこともあり、クロマトグラフィーは大変重要な研究手法として世界に広まってゆきました。


クロマトグラフィーの原理

担体と呼ばれる固定相と移動相の2つの相で構成されています。この両者が平衡状態になっているところに試料を注入すると、試料は移動相の流れに乗りますが、この時、試料中の各成分がこの2つの相とそれぞれ相互作用します。成分によって、相互作用の度合いが異なるので、それを利用して各成分を分離します。分離に使われる物理化学的原理には、分配、吸着、分子排斥、イオン交換があります。
さまざまなクロマトグラフィー用の担体が市販されていますが、特定の1つだけの作用を示すものはなく、その中でもっとも特徴的な作用でクロマトグラフィーの種類を区別します。

クロマトグラフィーの種類

クロマトグラフィーの種類は、まず、固定相が固体か液体か、移動相が液体か気体かでわけられます。液体のものは液体クロマトグラフィー、移動相が気体のものはガスクロマトグラフィーと呼ばれます。生体分子の分離、精製に使われるものの多くは液体クロマトグラフィーです。

液体クロマトグラフィーの例

液体クロマトグラフィーを例にとって、クロマトグラフィーの原理をみてみましょう。

複数の成分を含む試料を、溶媒に溶かしてクロマトグラフィーカラムに流します。
試料は移動相の流れに乗りますが、この時、試料中の各成分がこの2つの相とそれぞれ相互作用します。成分によって、相互作用の度合いが異なり流れやすさに差が出ます。
固定相(カラムの担体)に吸着しやすい成分は流れが遅くなり、吸着しにくい成分はそのまま流れてゆきます。
それぞれ試料が分画されます。
カラムの出口で分取してゆくことで、特定の成分だけを分離することができます。

生体分子の分離、精製に使われるクロマトグラフィー

塩析を利用した沈殿、密度勾配遠心、電気泳動ゲルによる分離などの手法と比べ、大量のサンプル処理が可能であることや、生体分子の特性を利用して分離できることなどから、液体クロマトグラフィーは生体分子の分離、精製に広く使われています。次に示すような異なる分離特性の方法を組み合わせることで精製効率を高めることができます。

特性 精製法 特徴
吸着 クロマトグラフィー
生物学的親和性(特異的リガンド) アフィニティークロマトグラフィー(AC) 特異性が高く、ワンステップで高純度サンプルを得ることができます。
抗体精製His-Tagタンパク質GST融合タンパク質精製などで広く利用されています。
表面電荷 イオン交換クロ マトグラフィー(IEX) 処理量、処理スピードとも優れ、初期精製から最終精製までのすべてのステップで使用されます。
クロマトフォーカシング 等電点の違いで分離する方法でイオン交換より高い分離能を示します。溶出には専用カラム・担体と専用バッファー(キャリアアンフォライト)が必要です。
疎水性 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC) タンパク質の疎水性の強さで分離する手法です。硫安分画やイオン交換クロマトグラフィーの溶出液など、高濃度の塩を含むサンプルの分離に使用され、水系のバッファーで溶出します。
逆相クロマトグラフィー(RPC) 溶出に有機溶媒を使用するためタンパク質は失活するので不向きです。ペプチドの分離に適しています。非常に高い分離能をもっています。
ゲルろ過クロマトグラフィー
サイズ ゲルろ過クロマトグラフィー(分子ふるいクロマトグラフィー)(GF) 試料を分子サイズによって分離しますが、ゲル電気泳動とは異なり、大きい分子の移動度が高くなります。
処理サンプル量は少ないものの、自由にバッファーを選択でき、穏やかな条件での分離が可能です。
脱塩、バッファー交換にも利用されます。最終精製で多く使用されています。

参考文献

  • Ostrowski W., Michael S. Tswett--inventor of column chromatography., Folia Biol (Krakow). 1968;16(4):429-48.
  • The History of the Kaiser Wilhelm Institute for Medical Research: 1929-1939(http://nobelprize.org/physics/articles/states/richard-kuhn.html)
  • Bobbitt, J. M., Schwarting, A. E., Gritter, R. J., 入門クロマトグラフィー, 東京化学同人(1971)
  • 松下至, 液体クロマトグラフィー100のテクニック, 技報堂出版(1997)

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