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全タンパク質の検出画像とイムノブロッティング画像の重ね合わせによる抗体反応性タンパク質の同定

抗原が複数ある抗体、例えば抗リン酸化チロシン抗体と反応するタンパク質をイムノブロッティングで検出した場合や二次元電気泳動で展開した後のイムノブロッティング検出の場合、抗体反応性を示したタンパク質の特定が困難なことがあります。

このような場合でも、以下に紹介する「全タンパク質の検出画像とイムノブロッティング検出画像を正確に重ね合せる手法」を用いることで、抗体反応性のタンパク質バンド(スポット)の位置を簡単に特定することができます。


検出の流れ

泳動したゲルをメンブレンに転写後、メンブレンをタンパク質染色試薬により検出し全タンパク質のイメージを取得します。その後、通常のウェスタンブロッティングのプロトコールに従い、抗体反応性タンパク質を検出します。最後に双方のイメージをぴったりと重ね合せることで、全タンパク質の泳動パターンのどのバンドあるいはスポットが抗体反応性を示したかを明らかにできます。

泳動分離パターンから反応スポットを特定できるため、抗体反応性を示すバンド、スポットについて、他サンプルとの定量比較や、質量分析計(MS)によるタンパク質同定解析を行うことができます。


重ね合わせ検出例 1. SDS-PAGEゲルから転写したメンブレンの重ねわせ検出

分子量マーカーであるLMW Markar Kitにトランスフェリン(Tranferrin)を混合したサンプルを用い、全タンパク質を蛍光染色試薬であるDeep Purpleで、抗トランスフェリン抗体を用いたイムノブロッティングはECL™ Plusによる化学発光検出で行いました。検出イメージャーとしてCCDイメージャーであるImageQuant™ Imagerを用い、ImageQuant™ TLを使い画像の重ね合わせを行いました。

図1にそれぞれの検出イメージを、図2に重ね合わせイメージを示しました。図2で黄色に見えるバンドが抗体反応性シグナルと重なりあった部分です。泳動パターンのどの位置が抗体反応性のタンパク質(トランスフェリン)であるかが、すぐにわかります。

図1

図1 Deep Purpleによる全タンパク質検出とECL™ Plusによるトランスフェリン検出

左: Deep Purple検出イメージ
右: ECL™ Plus検出イメージ

図2

図2 図1の重ね合わせ画像

Deep Purple【赤】、ECL™ Plusのシグナル【緑】で示しています。重なり合ったバンド(=トランスフェリン)は黄色に見えています。


重ね合わせ検出例 2. 二次元電気泳動ゲルから転写したメンブレンの重ねわせ検出

図3

図2 PVDF膜のDeep Purple染色を用いた二次元電気泳動で分離したラット腎糸球体のチロシンリン酸化タンパク質の同定

ラット腎臓糸球体タンパク質をサンプルとした、二次元分離からの抗リン酸化チロシン抗体による検出例が図2です。検出例1と同様に、メンブレン上の全タンパク質の検出にはDeep Purpleを、ウェスタンブロッティング検出にはECL™ Plusを用いました。イメージの取得には、Deep Purpleの蛍光検出にTyphoon™を、ECL™ Plusの検出にはX線フィルムを使用し、市販画像ソフトウェアにより重ね合わせを行いました。また、

二次元電気泳動による分離し転写したメンブレンのイメージ(A)と、抗リン酸化チロシン抗体による染色を検出例(B)を重ね合わせ(C)、チロシンリン酸化タンパク質のスポットを特定しています。

特定したスポットは、同じ条件で分離した二次元電気泳動を銀染色したパターン(D)とマッチングさせ、スポットの切出しからin-gel digestionし、質量分析計により同定解析に用いました。

※本データは、吉田 豊 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科附属腎研究施設)よりご提供いただきました。厚く御礼申し上げます。


まとめ

全タンパク質の染色に用いたDeep Purpleは、銀染色と同等の検出感度を持ちつつ定量性に優れている他、メンブレン上のタンパク質染色にも対応しています。また、Deep Purpleによるメンブレン染色は、その後の抗体反応に影響を与えることはありませんでした。

このアプリケーションは、抗体で検出した興味あるタンパク質について、定量比較やMS同定を行うための良い解析手法となります。検出例1のような実験系であれば、蛍光専用スキャナーを使わず*にこのような多重検出が可能ですので、ぜひお試しください。

* ImageQuant™ Imagerによる検出時には Deep Purpleを検出するための蛍光フィルターを使用しています。

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