Cytiva

検索のヘルプ

Location:Home実験手法別製品・技術情報サンプル調製:タンパク質濃縮・免疫沈降

免疫沈降による目的タンパク質解析の効率向上
 ~ Protein G HP MultiTrap™

Protein G HP MultiTrap™は、96穴タイタープレート型の免疫沈降用カラムです。多数サンプルを対象として、目的タンパク質を効率的に濃縮することが可能です。本報では、0.15%量になるようトランスフェリンをスパイクしたサンプルからProtein G HP MultiTrap™によるトランスフェリンの濃縮を行い、蛍光SDS-PAGEおよびLC/MSによるペプチド検出カバー率から濃縮効果を検証しました。


実験の流れ

1. 評価用サンプルの調製

濃縮効果を評価するタンパク質としてヒトトランスフェリン(hTf)を選択しました。大腸菌ライセートにEttan™ DIGEHyperPAGE用CyDye™(Cy5)で標識したhTfを0.15%* になるようスパイクしました(大腸菌ライセート:5 mg/ml, hTf:7.5 µg/ml)。

*0.15% = 一般的に中発現量タンパク質と同程度の含有量

クロスリンクプロトコールでは抗体とProtein Gを架橋することで、溶出液への抗体混入を抑制します

図1 標準的プロトコールとクロスリンクプロトコールの模式図

2. 免疫沈降

抗トランスフェリンポリクローナル抗体(ウサギ由来)をProtein G HP MultiTrap™に結合させ、免疫沈降用カラムを作成しました。抗体の結合は溶出液の抗体漏洩が少ないクロスリンクプロトコール(図1参照)を用いました。上記サンプル溶液のうち、200 µlを免疫沈降処理しました。

3. LC-MS解析用サンプルの調製

サンプル濃度を調整したのち還元アルキル化処理を行い、トリプシンにより切断しました(室温, OverNight)。その内の10 µlをLC-MSによって解析しました。

濃縮効果の検証結果

1. 蛍光SDS-PAGEによる解析

開始サンプル、および溶出サンプル(1~3ステップ)を泳動後、Deep Purple Total Protein Stainにて染色しました。サンプル調製前のhTfにラベルしたCy5とDeep Purpleは、蛍光検出時における励起/検出波長が重複しないため、それぞれを分離したシグナルとして検出することができます。

蛍光泳動イメージ(図2)を解析した結果、開始サンプルに対して50%強のhTfを回収し、100倍以上の割合で濃縮することができました。また、この大部分は1回目の溶出液により溶出されました。このことは、濃縮操作がより効率的に行われたことを示しています。

蛍光SDS-PAGEイメージ

図2 蛍光SDS-PAGEにおける開始サンプルと溶出サンプルの泳動パターン

緑:DeepPurple検出、赤:Cy5検出
レーン1~5: 開始サンプル原液、以降2倍づつ希釈
レーン6~11: 溶出ステップ1回目 (2プレート×3ウェル)
レーン12~17: 溶出ステップ2回目 (2プレート×3ウェル)
レーン18~23: 溶出ステップ3回目 (2プレート×3ウェル)

2. LC-MSによる解析

開始サンプルと溶出サンプルについてそれぞれLC-MS解析を行い、hTfのペプチド断片検出を比較しました。その結果、開始サンプルからはhTf由来のペプチドは検出できませんでした。対して免疫沈降後のhTf濃縮サンプルでは、hTf由来のペプチド断片が48本検出され、全長の70%にあたるアミノ酸配列を検出することができました。MS解析に用いた溶出サンプルはステップ1での溶出溶液の5%程度であることから、より発現量の少ないタンパク質が解析対象であってもProtein G HP MultiTrap™の免疫沈降メソッドが有効であることが示唆されました。

同定結果の信頼性とMS/MSスペクトル例

図3 hTf 免疫沈降濃縮サンプルにおけるLC-MS/MS解析結果

【上グラフ】
MS/MSによるタンパク質同定結果の信頼性(横軸)とペプチドピークの検出強度(縦軸)を表したグラフです。
開始サンプル(グラフ左、緑)からはhTf 由来ペプチドを検出できませんでしたが、濃縮サンプル(グラフ右、青)ではhTf について信頼性・ピーク検出強度ともに十分な同定結果が得られました。

【下スペクトル図】
hTf 由来ペプチドのMS/MSスペクトル例です。各ピークがしっかりと検出されており、十分な量のhTf が含まれていることがわかります。
スペクトル図の上にある棒状の表示は、全長hTf タンパク質(黒線)に対して検出されたペプチド部分(赤ボックス)を示しています。非常に広範囲のアミノ酸を検出することができました。

まとめ

目的タンパク質の濃縮・回収は、微発現量タンパク質を解析対象とする場合には必須の手法です。目的タンパク質をいかに効率的に、高い回収率で濃縮するかが信頼性の高い結果を得るための近道です。Protein G HP MultiTrap™は、効率と再現性を重視した96穴タイタープレートタイプの免疫沈降カラムであり、他サンプルの免疫沈降処理や条件検討に向いたタイプです。スピンカラムタイプのProtein G HP SpinTrap™や、抗体親和性の異なるProtein A HP MultiTrap™などの製品ラインナップもありますので、目的にあわせてカラムをご選択ください。

●96ウェルプレートでハイスループット対応
自動化・ハイスループットにも対応可能な96ウェルプレートタイプ(MultiTrap™)。

●ストレプトアビジン・NHSタイプをラインナップ
Protein G/Aのほか、ビオチンとストレプトアビジンの強固な相互作用によってカップリングするStreptavidin HP SpinTrap™、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)とリガンドのアミノ基のアミド結合によってカップリングするNHS HP SpinTrap™をラインナップしています。


お問合せフォーム

※日本ポールの他事業部取扱い製品(例: 食品・飲料、半導体、化学/石油/ガス )はこちらより各事業部へお問い合わせください。