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Life Sciences Day ポスター賞受賞者インタビュー④(2/2)
学会では、あんなに人が途切れず聞きに来てくださることはないです

独立行政法人 理化学研究所 長田抗生物質研究室 訪問研究員

二村 友史様

ポスターの内容をご説明いただけますか?

二村 友史様

がん細胞に抗がん剤を添加すると、細胞形態が変化して死に至ります。この形態変化は、抗がん剤の作用機序に依存して起こることは経験的に知られていました。私は様々な薬剤が誘導する形態変化を体系的にまとめたデータベースがあれば、新規抗がん剤の発掘に有用であると考えて研究を始めました。
私たちは、2種類のがん細胞(srcts-NRKとHeLa細胞)を用いて、作用機序が明らかな抗がん剤を添加した際の表現型を顕微鏡で観察し、形態変化パターンを分類しました。最初は、細胞の写真をただただ集めて見比べていました。そのうち写真を見ただけで、与えた薬剤の作用を言い当てられるようになりました。しかし、こうした形態観察は観察者の主観に左右されがちです。そこで私たちは、誰もが同じように解析できるようにするために、IN Cell Analyzerで細胞形態の定量化を試みました。
まずハイコンテントイメージング法の開発を行い、コンピューター上で複雑な細胞形態を認識し、In Cell Analyzer解析ソフトウェア内の12種類の形態変化パラメーターで特徴づけできました。次に約200種の標準化合物が誘導する形態変化を数値化し、得られた形態データと薬剤作用を定量的に関係付けた形態変化データベース「モルフォベース」を構築しました。このデータベースには54種類の典型的な抗がん剤が14のクラスターに分類されており、特徴的な形態変化から簡単に作用未知化合物の作用メカニズムを予測することができます。実際、このプロファイリング法を用いることで、これまでにいくつかの抗がん剤候補物質の作用を明らかにしました。

データを取得する際に苦労された点はありますか?

やはり、解析用プログラムに透過光の細胞を認識させるところが一番苦労しました。明視野画像だけで解析できるようにしたかったのですが、それは難しく、結局、核染色画像を利用することで、一つ一つの細胞をうまく切り分けられました。HeLa細胞用にプログラムを組むときには、細胞認識でとても苦労しましたが、2種類目の細胞は、HeLa細胞で使ったプログラムを少し応用することですんなりと解析プログラムを組むことができました。
また今回、薬剤が誘導するさまざまな細胞形態を特徴づけるために、細胞質や核、顆粒について大きさや数、扁平率、縦横比など12種のパラメーターを設定し、一つの化合物について71次元のデータを取得しました。約200種類の化合物を評価したので、約14000のデータが出てきます。取得した膨大なデータをどのように解析するかがもう一つの重要な課題でしたが、統計解析ができる方が同じ研究室にいたことは、本当にラッキーでした。

既存のクラスターに分類されない化合物が出てきた場合はどのようなアプローチで作用メカニズムの解明を試みますか?

既存のクラスターに分類されない化合物は、これまでに抗がん剤の標的として重要視されていなかった分子標的に作用する新規物質である可能性が高く、抗がん剤創薬を一層加速するものと期待できます。
既存の14のクラスターに分類されない化合物が出てきた場合の1つのアプローチは、当研究室の室井らが確立した2D DIGEを使ったプロテオーム解析です(Chem Biol. 2010 May 28;17(5):460-70)。2D DIGEを使ったプロテオーム解析も、私の研究アプローチと基本的には同じです。評価対象が、細胞形態なのか、タンパク質なのかという違いだけです。ただし、見ている表現型が違うので、それぞれに強み弱みがあります。片方の手法をブラッシュアップしていくよりは二本立てで検討して、予測の範囲や精度を上げようとしています。二つのプロファイリング法を組み合わせることにより、研究室で発見された新規化合物の作用機序をいち早く解明し、昨年論文報告しました(Chembiochem. 2013 Dec 16;14(18):2456-63)。プロファイリングで作用を予測できない場合は、化合物ビーズを用いて直接結合タンパク質を探索します。一般的には、化合物にビオチンタグをつけて、それをアビジンビーズなどでつり上げますが、私たちの研究室では官能基非依存的に化合物とビーズを結合させるテクニックを開発しており、様々な化合物の標的同定をなし得てきました。

将来の展望についてお聞かせください。

企業ではありませんが、この化合物を評価してほしいというお話をいただいたりしています。いい結果もあれば悪い結果もあるのですが、こういった共同研究のような形で実績を増やしていきたいと思います。

 

二村様ありがとうございました。

二村様が所属されている 独立行政法人理化学研究所 長田抗生物質研究室のHPです。ぜひご覧ください。
≫ 長田抗生物質研究室のHP

 

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