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Location:Home実験手法別製品・技術情報2D DIGE(蛍光標識二次元発現差異解析)

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DIGE 道場 第3回
できるプロのタンパク質抽出術

第3回 もくじ

  1. はじめに ~とってもDIGE(大事)なタンパク質抽出~
  2. タンパク質可溶化液について 
  3. 培養細胞からのタンパク質抽出法
  4. 組織からのタンパク質抽出法
  5. おわりに

Dr. 近藤のコラム
→コラム第3回 「生涯道場編」 ~戦うプロテオーム研究~

レーザーマイクロダイセクション法 プロトコール
4. レーザーマイクロダイセクションによる切片切断

機械によって操作方法が異なること、2D-DIGE法だからと言って特別なことをしているわけではないこと、などから詳細は省略する。詳細はメーカーの担当者に聞いていただきたい。親切に教えてくれるだろう。

筆者が使用しているものは、ニップンテクノクラスタ株式会社が扱うMMI社の機械である(mmi Cellcut、Molecular Machine & Industries、チューリッヒ、スイス)。操作方法はいたって簡単で、メーカーの担当者から1時間も説明を受ければ誰でも使える。経験的にMMI社の機械は故障がきわめて少ないため複数の実験者が共有してもまったく不安がない。これから購入しようとされる方は、実際に長期間使用しているユーザーに相談することを強くお勧めする。最初の1年間の保証期間が過ぎたあとに発生する故障に払う修理代は予測がつかず、場合よってはその研究を中止せざるを得ないほど高額なのだが、メーカーの方も長期間の安定動作についてはデータをもっていないことが普通だからである。

レーザーマイクロダイセクションによる切片切断の流れ

図7

図7 モニターでこれから切る部分の輪郭決めをしたところ

これからレーザーを照射する。あらかじめ、面積にして1 mm平方分を囲っておくと残りは全自動で機械が行う。1サンプルにつき3枚のゲルを2D-DIGE法にかけること、内部標準用にもタンパク質サンプルが必要なこと、などから合計では6 mm平方の面積の腫瘍細胞を回収している。撮影協力;諸藤教彰医師(左)、植村則久医師(右)。

図8

図8 切断時の切片画面

レーザーが輪郭をなぞるように切っている。

光って見えるところがレーザーが当たっているところ。

図9

図9 モニターでこれから切る部分の輪郭決めをしたところ

切片から必要な数の細胞を回収し終えた。見えにくくて申し訳ないが、抜けているところが分かるだろうか?この専用スライドグラスはニップンテクノクラスタ社を通じてMMI社から市販されている。

図10

図10 切断した細胞の回収

MMI社の機械の場合、このようにエッペンドルフチューブのふたのところにシリコンを満たしておき、そこにレーザーマイクロダイセクションで回収した細胞をひっつけて回収する。

青みがかった切片がわずかに付着しているのが見えるだろうか?この専用チューブは2種類のサイズがニップンテクノクラスタ社を通じてMMI社から市販されている。

このあとふたの内側のシリコンにへばりついている組織切片を先の尖ったピンセットや注射針を使ってチューブに落とす。そしてエッペンドルフチューブに上述のタンパク質可溶化液を入れる。組織の面積3ミリ平方につき50 µlの割合である。その後、軽く遠心した後に-80℃で保存する。

使用に際してはエッペンドルフチューブにはフィルムに固着した組織がタンパク質可溶化液と共に入っている。この状態で高速遠心して上清を回収しようとしてはいけない。そのまま37℃で1時間インキュベートして還元し、その後ただちに蛍光色素を入れて37℃で30分間、標識する。最後にエッペンドルフチューブの中にフィルムは残るのだが、合計で1時間30分ほど37℃処理しているので、タンパク質はすっかりフィルムから溶け出している。この状態でタンパク質を回収する。フリーのフィルムもいっしょにIPGゲルにいってしまうのだが、実験をする上ではまったく問題ないのでそのままにしておく。

図11

図11 食道がん腫瘍組織からレーザーマイクロダイセクションで細胞を回収したときの二次元電気泳動画像

特にチャンピオンデータというわけではなく、これくらいの画像がルーチンに得られる。施行者は食道がん外科を専門とする植村則久医師。レーザーマイクロダイセクションと蛍光二次元電気泳動法を使って500枚ほどのゲルを泳動し、手術後の予後を予測できるバイオマーカーを開発している。今年になってついに候補となるタンパク質を同定し、免疫染色で検証実験に成功した。臨床検体を用いた食道がんのプロテオーム解析としてはもっとも本格的なものである。

図12

図12 悪性胸膜中皮腫の腫瘍組織からレーザーマイクロダイセクションで細胞を回収して得られた二次元電気泳動画像

施行者は寶迫睦美研究員。彼女もプロテオーム解析はまったくの初心者だがすぐに手技をマスターしどんどんデータを出している。悪性胸膜中皮腫と他の悪性腫瘍との鑑別診断が臨床的に問題になることがあるので、鑑別診断に有用なバイオマーカーを開発している。悪性胸膜中皮腫の組織型を区別し、腫瘍細胞と他の細胞を区別して細胞を回収しなくては、特定の腫瘍細胞に特有のタンパク質を同定することはできないだろう。

レーザーマイクロダイセクション法による試料調製 詳細プロトコール

  1. 凍結切片の作製
  2. 確認のための凍結切片の染色(HE染色)
  3. 2D-DIGE法サンプル調製用の凍結切片の染色
  4. レーザーマイクロダイセクション

次へ B. 凍結状態の試料からの試料調製

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