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Location:Home実験手法別製品・技術情報BIA(生物物理学的相互作用解析) > 相互作用解析の王道

Presented by Dr. Kouhei Tsumoto
東京大学大学院
医科学研究所
津本 浩平 先生

連載「相互作用解析の王道」を終えるにあたって
~3年間を振り返って、そしてこれから~

4. 相互作用解析の未来
4-1 トータルコーディネーションが必要になってきた

津本:熱力の平衡論的な最初と最後ということに関しては、方法論的にかなり確立してきました。自分でタンパク質を作って、変異体を作って、解析するというながれは一般化してきましたが、kon, koffを単純に求めるのではなくて、その結合の途中で何が起こっているのかを記述しようという流れになっています。

知也:コンフォメーション変化とか。

津本:そうそう。あるいは低分子側も実はリンカーがつながっていたら、リンカーの全くない板状という薬はないので、どこかでつながっていますよね。
メチレンの2個とか、そのメチレンの動きという低分子単品での議論はされてきましたけど、そこの熱力学をタンパク質と絡めて議論しなければいけない。低分子が水の中でどういう状態にいてという理解と、タンパク質のポケットの中でどういうふうに振る舞うかという理解をしていかなければいけない。そうなると、情報科学がいよいよ入ってくる。

知也:夢みたいですね。現実になってきたわけですね、20年かかって。

津本:そうそう、いよいよなってきた。そういう技術革新が、あったと思う。しかもそれは我々の同世代の人たちが授業で習ってきたような、黒板を写して、こういうふうになるよといわれていたことが、今、そこで若い人たちがキーボードを叩いて実際にやっているという時代になってきていると。なので、これまでに開発され進展してきている相互作用の解析が、これからの前提になって、さらにそこからどうするの?ということが求められるでしょうね。
だから、新しい技術・原理という意味においては、現状、オルタナティブになるような方法が出てきているというわけではないと思いますね。むしろ、この場合はこういう手法のほうがよいのでは、という提案が当面続くと思います。原理に関しては、決定的に新しいのがなくて、FRETならこうできる、このプローブならこうです、共焦点はここで良くなった、いろんな改善があったということになると思うんです。これから新しい技術、原理というよりは、それをいかに使いこなすかということだと思いますね。

知也:具体的に仕事の仕方として、スパコンや計算化学と実際のウェットな実験は、どういう流れで進んでいくのでしょう。

津本:クロストークだと思います。Cross-validationで行き来する時代だと。in silicoで設計して、合成した分子をウェットで確認して終わり、ということではなくて、これからは、ウェットの結果をin silico側にフィードバックして、設計を改善して、というサイクルを回すことになるでしょう。だから、一つのチームでできるというより、複数のコンソーシアムみたいな中で仕事を進める必要が出てきます。そうなってくると、例えば製薬企業は強いですね、社内でできるので。問題はその人たちが、縦割りの部署で別々にやるのでなくて、一緒になってやれるかどうか。

太蔵:横串チームがつくれるかどうかということですね。

津本:そうです。いずれ、そうなってくると思います。実際、うまくいっているなという話を聞くところは、横串的にサーッといけているところが多いです。
なので、おのおの専門性は相変わらず残っているにしても、例えば結晶をやっている人は計算もやるとか、結晶だったらプリパレーションできる人は、じゃBiacore™・ITCもとかいうようなものが確実に流れていて、一番大きな流れで最近感じているのは、細胞とかvivoですね。動物を使っていた人たちが、タンパクをとって解析してみようかしら、という流れは確実にできていると思う。

太蔵:それは製薬会社のほうですか。

津本:ですね。アカデミアではなくて。
アカデミアはもちろん動物は動物、vivoを使って究めていきますけど、現実に自分たちは速度論的な理解が、好き嫌いはともかく、欠かせなくなっています。だから、相互作用解析はすたれることは絶対なくて、今後ますます使われるようになります。そして、それは他の方法とのCross-validationになる。これまでそれを提唱してきたけれど、これから5年はそれを実際に応用していくと思うんです。
そういう意味では、要素技術が成熟してきている中で、目的に応じてどう組み合わせるかというようなところが各社、各アカデミアに求められているのかなという気がいたします。

太蔵:まさに最近流行っている、ソリューションとか、そういうことですね。

津本:そうそう。そういう意味では、トータルコーディネーションが必要になってきたと思うんです。

 

次のページへ 創薬が今イノベーションを受けているという状態だと思いますね



相互作用解析の王道」について

相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。

連載記事一覧
タイトル 配信
ご挨拶 連載「相互作用解析の王道」を始めるにあたって 2009年8月
第1回 原理:其は王道を歩む基礎体力 2009年10月
第2回 実践編その1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例 2009年12月
第3回 対談:アフィニティーを測定する際の濃度測定はどうする? 2010年2月
第4回 実践編-2:相互作用解析手法を用いた低分子スクリーニング その1 2010年4月
第5回 実践編-3:核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析 2010年8月
第6回 概論:タンパク質/バイオ医薬品の品質評価における、SPR/カロリメトリーの有用性 2010年11月
第7回 抗体医薬開発の技術革新~物理化学、計算科学との融合~ 2011年5月
第8回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~相互作用の観点から~ 2011年8月
第9回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~タンパク質の構造安定性の観点から~ 2011年9月
第10回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(1) 2011年10月
第11回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(2) 2011年12月
参考 用語集  
〈応用編〉連載記事一覧
タイトル 配信
第1回 抗体医薬リードのカイネティクス評価手法の実例 2012年5月
第2回 細胞表面受容体の弱く速い認識を解析する 2012年7月
第3回 SPRを用いた分子間相互作用測定における、“低”固定化量の重要性 2012年8月
第4回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(1) 2012年9月
第5回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(2) 2012年10月
第6回 「ファージライブラリによるペプチドリガンドのデザインにおける相互作用解析」 2012年11月
第7回 SPRとITCの競合法を用いたフラグメント化合物のスクリーニングとキャラクタリゼーション 2012年12月
第8回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(3) 2013年2月
第9回 熱分析とタンパク質立体構造に基づくリガンド認識機構の解析 2013年3月
〈最終回〉
最終回 連載「相互作用解析の王道」を終えるにあたって ~3年間を振り返って、そしてこれから~ 2013年4月

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関連リンク

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