はじめに

Biacore™ で固定化や測定を行う際、はじめのStepやCommandでConditioningが設定されているものがあります。こちらは使用するセンサーチップやキャプチャーキットに依存し、Conditioning溶液はセンサーチップ表面にも流れます。その名の通り、チップ表面を適切な状態に整えるために必要です。必ず実施してください。場合によっては、Interactive RunやManual Runを行う際にも同様の操作を行ったほうがいいケースがあるかもしれません。

各センサーチップ・キットにおけるConditioningに関してTable 1にまとめます。ご使用いただく際には必ずセンサーチップ・キットの説明書を確認してください。

Table 1:各センサーチップ・キットにおけるConditioning

使用する溶液 実施するタイミング 目的
Sensor Chip SA 1M NaCl / 50 mM HCl Immobilization run 残存SAの除去
Sensor Chip NA 1M NaCl / 10 mM HCl
1M NaCl / 50 mM HCl
Immobilization run 残存NAの除去
Biotin CAPture Kit 付属再生溶液 Assay run オリゴDNAの変性
Sensor Chip NTA + NTA Reagent Kit 付属再生溶液 Assay run NTAの脱キレート
GST Capture Kit 付属Recombinant GST
付属再生溶液
Assay run 高親和性部位のブロッキング

それでは、センサーチップやキャプチャーキットごとに見ていきましょう。

Sensor Chip SAとSensor Chip NA

Sensor Chip SA(StreptAvidin)とSensor Chip NA(NeutraAvidin)はBiotin化リガンドを強固にセンサーチップへキャプチャーさせたい時のセンサーチップです。Sensor Chip NAの詳細は「このセンサーチップご存じですか?」をご参照ください。
いずれのSensor ChipもImmobilizationを実施する際、はじめにConditioning溶液が添加されるCommandが3回入ります(Figure 1)。

Sensor Chip NAのConditioning

Figure 1:Sensor Chip NAのConditioning

Sensor Chip SAとNAとで使用する溶液は少し異なりますが(Table 2)目的は同じです。これらのSensor Chipでは製造工程でチップ表面に非共有結合でSAまたはNAが残存しています。そのためリガンド添加前に、これらを洗い流す必要があります。リファレンスセルも含めて使用するフローセルにはConditioning溶液を流していただくことをお勧めします。Insight Software以外のImmobilizationでは、リファレンスセルも一度にConditioningを行うテンプレートが入っていませんのでご注意ください。

Table 2:Sensor Chip SAおよびNAで使用するConditioning溶液

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Sensor Chip SA 1M NaCl / 50 mM HCl 1M NaCl / 50 mM HCl 1M NaCl / 50 mM HCl
Sensor Chip NA 1M NaCl / 10 mM HCl 1M NaCl / 10 mM HCl 1M NaCl / 50 mM HCl

Biotin CAPture Kit

Biotin CAPture Kit は、StreptAvidinを介してBiotin化リガンドをセンサーチップへ安定的にキャプチャーできる上、キット付属の再生溶液でリガンドが外せてチップの再使用ができるという便利なキットです。Biotin CAPture Kitの詳細はこちらをご参照ください。
Biotin CAPture Kitでは、Immobilizationのステップは不要です。測定を行う際、はじめのStepとしてConditioningをおこないます(Figure 2)。

Biotin CAPture kitのConditioning

Figure 2:Biotin CAPture kitのConditioning

使用するConditioning溶液はBiotin CAPture kit付属の再生溶液です。Regeneration Stock 1とRegeneration Stock 2を3:1で混和して用います(Regeneration Stock 1は冷蔵保管で結晶を生じますので十分に室温に戻してから使用します)。Biotin CAPture kit付属のSensor Chip CAPにはオリゴDNAがプレイモビライズされています。そのため、チップ表面上の核酸同士が一部結合している可能性があるためConditioning溶液で変性させてチップ表面を整えます。これによりBiotin CAPture Reagent(相補差SAコンジュゲート)が適切に結合できるようになります。
Biotin CAPture KitのConditioningは、特にシステムにドックした初回に必要で、Standby flowでチップを入れたままにしていた場合、次回の測定では必ずしも必要ではありません。

新品のSensor Chip CAPを開封して、一番初めに実施するのはRehydrationです。いくつか方法はありますが、測定する前日からシステムにドックしてStandby flowにしておく方法が簡便です。

Sensor Chip NTA + NTA Reagent Kit

Sensor Chip NTA(nitrilotriacetic acid)は、Ni2+を介してHisタグ付きリガンドをセンサーチップにキャプチャーさせるセンサーチップです。別途NTA Reagent Kitをご購入いただくことで、ニッケル溶液と再生溶液が準備できます。キット付属の再生溶液でリガンドが外せてチップの再使用ができるというメリットがありますが、Hisタグの結合はあまり強くないため、測定中のベースラインドリフトが問題になることがあります。ベースラインドリフトへの対策を含めHisキャプチャーのアプローチに関してはこちらの資料を参考にしてください。
Sensor Chip NTAでは、Immobilizationのランは不要です。測定を行う際、はじめのStepとしてConditioningをおこないます(Figure 3)。

Sensor Chip NTAのConditioning

Figure 3:Sensor Chip NTAのConditioning

使用するConditioning溶液はNTA Reagent Kit付属の再生溶液です。Regeneration solution, 350 mM EDTAをそのまま使用します。Sensor Chip NTAにはキレート剤であるNTAがプレイモビライズされています。そのため、二価の金属イオンが流路中に残存している場合、チップ表面上のNTAがキレートを形成している可能性があるためConditioning溶液でチップ表面を整えます。これによりNi2+を介してHisタグ付きリガンドが適切にキャプチャーできるようになります。
Sensor Chip NTA では各測定のはじめに毎回ConditioningのStepを実施します。

Sensor Chip NTAでは、NTA amine(NTA Crosslink)と呼ばれる固定化方法を用いる場合があります。キレート反応でNTAにキャプチャーしたHisタグリガンドをセンサーチップにAmine Couplingする方法です。この場合も、はじめのCommandはRegeneration solution, 350 mM EDTAによるConditioningです(Figure 4)。

Sensor Chip NTAのNTA amineにおけるConditioning

Figure 4:Sensor Chip NTAのNTA amineにおけるConditioning

GST Capture Kit

GST Capture Kitは、抗GST抗体を介してGSTタグ付きリガンドをセンサーチップへキャプチャーする方法です。Sensor Chip CM5などのカルボキシメチル基が導入されたセンサーチップとAmine Coupling Kitを別途ご用意いただき、測定前に抗GST抗体を固定化しておく必要がありますが、キット付属の再生溶液(10 mM Glycine-HCl pH 2.1)でGSTタグ付きリガンドが外せて、抗GST抗体固定化済みチップの再使用ができるというメリットがあります。
測定を行う際、はじめのCycleとしてConditioningをおこないます(Figure 5)。

Biotin CAPture kitのConditioning

Figure 5:Biotin CAPture kitのConditioning

使用する溶液はGST Capture Kit付属のRecombinant GSTと再生溶液です。5 μg/mL Recombinant GST になるようランニング緩衝液で希釈し、再生溶液は10 mM Glycine-HCl pH 2.1をそのまま使用します。GST Capture Kit付属のAnti-GST antibodyはポリクローナル抗体で、非常に高い親和性部位がわずかに含まれます。このままでは十分な再生が困難となるためRecombinant GSTでブロッキングを行います。1~3サイクルのConditioningにより、GSTタグ付きリガンドが適切にキャプチャーおよび再生できるようになります。

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