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Location:Home実験手法別製品・技術情報BIA(生物物理学的相互作用解析) > 相互作用解析の王道

Presented by Dr. Kouhei Tsumoto
東京大学大学院
医科学研究所
津本 浩平 先生

原理:其は王道を歩む基礎体力(4)

目次

  1. 相互解析作用序論
  2. 表面プラズモン共鳴を用いた速度論的解析
    1. 測定原理
    2. 結合の反応速度と平衡状態
    3. フローシステムを採用したSPR測定における速度論の取扱い(当ページです)
    4. van't Hoffエンタルピー(ファントホッフエンタルピー)
    5. 実験上のポイント
  3. 等温滴定型熱量測定
    1. 測定原理
    2. 実験上のポイント
  4. 最後に

2. 表面プラズモン共鳴を用いた速度論的解析

2-3. フローシステムを採用したSPR測定における速度論の取扱い

前述のように、速度定数の測定のためには二分子反応であっても見掛け上の一次反応の条件を作り出せば良いわけです。Biacore™のようなフロー法を採用している測定系では、固定化した固相の分子Bに液相の分子Aを一定の濃度で供給し続けるシステムを持っています。すなわち(f2)式において、[A]は時間に関係なく[A]0の状態を保持することで[A]0>>[B]の条件を満たさなくとも[A]=[A]0として扱うことが可能です。アナライト濃度をC、形成された複合体濃度をレスポンスの変化量Rに置き換え、[B]0を最大結合量Rmaxに対応させると、速度式は

dR/dT=kassC(Rmax-R)-kdissR、(f7)

(f7)式のように表され、これを変形すると下記の式を導くことができます。

dR/dT=kassCRmax-(kassC+kdiss)R、(f8)

これは(f5)式と同形であり、一次反応の取り扱いができることになります。

ここで、上述の反応速度論的解析法では、得られたセンサーグラムを非線形最小二乗法により直接カーブフィッティングさせ、解析する非線形解析(Non linear fitting)法は、例えばBiacore™に付属の解析プログラムを用いることで可能となります。解析にはLocal fitting(アナライトの各濃度に対する1本のセンサーグラムごとに一つずつパラメータを算出)とGlobal fitting(アナライトの全濃度にわたって同時にカーブフィッティングを行う)があります。

低アフィニティーの相互作用では反応が極めて早く平衡へと移行し、その結果、結合領域および解離領域が極めて短く、速度論的解析が困難になることがあります。その場合については、アナライト濃度を変化させ、平衡に達したときのRU値の解析からReqを直接測定してKDを求めることもできます。(f8)式においてdR/dt=0、R=Reqkdiss/kassKDと置き換えて変形すると(f9)式が得られます。

Req/C=Rmax/KD-Req/KD、(f9)

Req/CをReqに対してプロット(Scatchard Plot)すると直線が得られ、その傾きの逆数からKDの算出が可能となるわけです。

次へ(表面プラズモン共鳴を用いた速度論的解析 - van't Hoffエンタルピー(ファントホッフエンタルピー))


相互作用解析の王道」について

相互作用解析の王道」は、2009年8月よりバイオダイレクトメールでお届けしています。

連載記事一覧
タイトル 配信
ご挨拶 連載「相互作用解析の王道」を始めるにあたって 2009年8月
第1回 原理:其は王道を歩む基礎体力 2009年10月
第2回 実践編その1:抗シガトキシン抗体の相互作用解析例 2009年12月
第3回 対談:アフィニティーを測定する際の濃度測定はどうする? 2010年2月
第4回 実践編-2:相互作用解析手法を用いた低分子スクリーニング その1 2010年4月
第5回 実践編-3:核酸-タンパク質相互作用の熱力学的解析 2010年8月
第6回 概論:タンパク質/バイオ医薬品の品質評価における、SPR/カロリメトリーの有用性 2010年11月
第7回 抗体医薬開発の技術革新~物理化学、計算科学との融合~ 2011年5月
第8回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~相互作用の観点から~ 2011年8月
第9回 対談:バイオ医薬品の品質管理技術の発展性~タンパク質の構造安定性の観点から~ 2011年9月
第10回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(1) 2011年10月
第11回 実践編-4:フラグメントライブラリーの測定におけるSPR/ITC戦略の実効性と効率的活用法(2) 2011年12月
参考 用語集  
〈応用編〉連載記事一覧
タイトル 配信
第1回 抗体医薬リードのカイネティクス評価手法の実例 2012年5月
第2回 細胞表面受容体の弱く速い認識を解析する 2012年7月
第3回 SPRを用いた分子間相互作用測定における、“低”固定化量の重要性 2012年8月
第4回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(1) 2012年9月
第5回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(2) 2012年10月
第6回 「ファージライブラリによるペプチドリガンドのデザインにおける相互作用解析」 2012年11月
第7回 SPRとITCの競合法を用いたフラグメント化合物のスクリーニングとキャラクタリゼーション 2012年12月
第8回 DSC(示差走査熱量計)によるタンパク質の熱安定性評価(3) 2013年2月
第9回 熱分析とタンパク質立体構造に基づくリガンド認識機構の解析 2013年3月
〈最終回〉
最終回 連載「相互作用解析の王道」を終えるにあたって ~3年間を振り返って、そしてこれから~ 2013年4月

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関連リンク

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東京大学 医科学研究所 疾患プロテオミクスラボラトリー


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