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How to guide: ラテラルフローアッセイの「マルチプレックス化」

ラテラルフローアッセイをマルチプレックス化する前に考慮すべきこと

ポイント・オブ・ケア・テスト(POCT:臨床現場即時検査)検出アッセイに対するニーズが顕在化しており、検体から特定のバイオマーカーを検出するラテラルフローアッセイ(LFA)が利用されています。中にはLFAの開発経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、まだこの手法には改善の余地があります。たとえば、検体内の複数のターゲットを特定することで、「検出精度」「感度」「特異性」を大幅に向上させることができる可能性があります。

「マルチプレックス化」=複数のターゲットを1つのアッセイで同時検出すること、が魅力的である理由は数多く挙げられます。初めてゼロからマルチプレックス化に取り組む場合であっても、以前開発したシングルプレックスアッセイをベースにして開発をアップデートする場合でも参考となるように、ここでは、「マルチプレックス LFA」 を開発する際に考慮すべき重要な要素と、よくある質問をQ&A方式でお答えしながら紹介します。

なぜ「複数ターゲット」なのか?

病原体の検出で問題となる、陽性を見落としたり突然変異したりする可能性があるターゲットを検査する場合、「マルチプレックス化」によって複数ターゲットをスクリーニングすることはとても価値があります。ターゲットを見逃して偽陰性と判定した場合には、最悪の結果をもたらすことになります。同様に、誰もがバクテリアやウイルス内のすべての抗原に反応し、抗体を産生するわけではありません。複数のターゲットを対象にすることで、偽陰性の結果が出る可能性を低くすることができます。

さらに、細菌種やウイルスなどの1つの抗原を検出するように設計された検査の感度と特異性より、複数ターゲットを組み合わせて同時検出することで検査精度を大幅に向上させることができる可能性もあります。

また、サンプルによっては検査に利用可能な量が限られている場合もあります。

したがって、単一のアッセイで複数ターゲットを検査できるということは、検体から1つの抗原を検査するだけではなく、幅広く情報を取得できることを意味しています。それによって、正しい診断の可能性を高めることができます。

同一サンプルを同じターゲットセット(たとえば、感染症ウイルススクリーニング検査、インフルエンザ迅速検査、アレルギー迅速検査用IgE測定、また昨今の新型コロナウイルス感染症関連ではIgM/IgGの同時検出キットが販売され、また同様な感染性呼吸器疾患を示すウイルスの同時検査についても期待されています。)に対して個別にスクリーニングが行われる場合もあり、それらを1つのアッセイに組み合わせることで、ユーザーの処理時間とコストを大幅に削減することができます。また、単一のデバイスを使用することになるので、廃棄物を減らすことができ環境面でもメリットがあります。

一に最適化、二に最適化、、、三四がなくて、五に「最適化」

検査アッセイのターゲットが複数になれば、ラテラルフローデバイス(LFD)のコンポーネントや試薬の可能な組み合わせも多くなります。これはエラーのリスクを高めるので、うまく機能する試薬やコンポーネントを選択することが重要です。他のラテラルフローアッセイと同様に、テストが正しく実施されていることを確認するために適切なコントロールを用意することも大事になります。

同じメンブレン、サンプルパッド、試薬を使用する独立したアッセイを開発し最適化したとしても、マルチプレックス化の際に一度組み合わせただけで、それらが最高のパフォーマンスを発揮することを保証するものではありません。したがって、コンポーネントを組み合わせた後は「アッセイシステムとして最適化」する必要があります。

ここで非常に重要なのは「フローレートの最適化」です。フローレートが低すぎると、サンプルが最後のテストラインに到達する頃には、最初のサンプルが色あせたり滲んだりしてしまいます。一方フローレートが速すぎると、感度が低下してしまうことがあります。また、あるコンジュゲートが他のターゲットのテストラインに非特異的に結合する可能性もあるため、交差反応や干渉には注意が必要です。

成功させる秘訣は ”80点主義”

各ターゲットで最高のパフォーマンスを発揮するコンポーネントが異なる場合にはどうしたらよいのでしょうか? すべてのターゲットに対して最高性能を発揮することが理想的ですが、マルチプレックステストを開発する際には、歩み寄った「折衷案」が重要です。”3つの80点”のターゲットから得られるメリットは、完璧に最適化された1つのターゲットを上回る可能性があるからです。

各アッセイターゲット、サンプル、その他のコンポーネントに対するダイナミックレンジは同じではない場合があります。しかし、それぞれのターゲットはすべて単一のサンプルとして検出される必要があります。すべてのターゲット候補を検出できるように希釈し、それに応じてターゲットごとを調整する必要があります。

同様に、個々のターゲットのピークシグナルは、測定時間にばらつきが生じる可能性があります。ターゲットによっては、互換性がない場合もあります。

そういった場合、ラインを引くタイミングを見極めたり、組み合わせているターゲットを再考することも大切です。開発時に一旦候補から外れたターゲットも、組み合わせることによって感度や特異性が向上し、より良い選択肢となる場合があります。

──Q:好きな順番でテストラインを決めてもいいのですか?

いいえ。複数のターゲットとコンジュゲートからのピークシグナルは、サンプル滴下後、異なった時間に現れる可能性がありますが、すべてのターゲットを同じ時間内で検出することが重要です。たとえば、あるターゲットがサンプル滴下後 5 分で最大のシグナルを発する一方で、別のターゲットは35 分である場合、ターゲットの選択または最適化をもう一度考え直す必要があると言えます。まず複数のターゲット候補から各ピークシグナルを特定し、テストラインの最適な配置を決定するために、さまざまな位置でピークシグナルを配置してみます。

──Q:1回のアッセイで検出できる「ターゲット数」は?

デバイス自体に物理的な制限があり、各テストラインは互いに干渉(ラインの滲みなど)しないように十分に離す必要があります。また、デバイスを長くすればメンブレンに沿ってサンプルを流すことが難しくなり、フローレートは距離に応じて非線形に減少します。したがって、ターゲット数については明らかに物理的な制約がつきまといます。

すべてのラテラルフローアッセイと同様、コントロールラインは不可欠です。コントロールライン以外に、少なくとも「3つのターゲット」が可能です。 ただ、ターゲットの数を増やせば最適化はより複雑となり、失敗の可能性が高くなることも覚えておいてください。

──Q:エンドユーザーへもたらす影響は?

マルチプレックスアッセイはエンドユーザーにとって“両刃の剣”と言えます。マルチプレックス化によって検査プロセスを迅速化でき、ユーザーはシングルアッセイを行うだけで済むため、ミスの発生要因を減らすことができます。

しかし、マルチプレックスアッセイの結果を解釈するにあたって、必然的に陽性/陰性のみの判定よりも複雑化します。誤診を避けるためには、どのテストラインがどのターゲットのテストラインで、どこにコントロールラインがあるのかを明確にすることが重要です。

開発しようとしているマルチプレックスアッセイのエンドユーザーが誰であるか。結果を正しく解釈するのに、エンドユーザーにとってガイダンスの指示は十分か。あるいはこれらを実行するリーダーシステムの方がより適切であるか。こうした項目もあわせて検証する必要があります。

マルチプレックスアッセイで複数ターゲットのうち、あるターゲットでは陰性だが他方のターゲットでは陽性がでた場合、どのように対処すればよいのでしょうか? ユーザーが結果の重要性を解釈し、再検査が必要な場合には「どのような場合に再検査が必要か」を知ることができるように十分な情報を提供する必要があります。

コストも重要検討事項です。必然的に、ターゲットを増やすことはコスト増につながります。狙っている市場のこれからの経済動向をどのように捉えるか? 注意深く精査する必要があります。

ここでの問いは、マルチプレックスLFAの開発に不可欠なものです。もしご不明な点などございましたら、バイオダイレクトラインまでご相談ください。

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